日立製作所が技術やサービスを実用化する「社会実装」で強みを発揮している。顧客企業と一緒に新たな事業を創出する重要なミッションを担っているのが、研究開発グループに属する研究員だ。かつてはプロダクトアウト型だった研究開発組織を、10年近くかけてマーケットイン型に再編成。実践重視の「前に出る頭脳集団」へと変貌した。日立は中核の社会イノベーション事業に集中するため関係性が低い上場子会社を社外へ切り出す構造改革を断行したが、躍進を支えるのはそれだけではない。「稼ぐ研究員」づくりという構造改革のB面の存在が、日立の強さを形作るもう一つの原動力になっている。

日立製作所は顧客企業との事業創出に注力している(写真=北山宏一)
日立製作所は顧客企業との事業創出に注力している(写真=北山宏一)

 「お客様と価値協創サイクルを回し、売り上げと利益を拡大していきましょう」。日立の小島啓二社長兼CEO(最高経営責任者)は2023年の年頭あいさつで従業員にこう語りかけた。社会イノベーション事業が中核の日立は、顧客と新たな事業やサービスを一緒に編み出して課題解決を目指す「協創」を成長ドライバーにしようと注力している。

 武蔵野の原生林に囲まれた日立製作所の中央研究所(東京都国分寺市)。22年12月、日立が顧客企業と一緒に創出した新たな事業やサービス、ビジネスモデルなどを展示した会場で、日立の強さの一端を垣間見ることができた。

東京・国分寺市にある日立の中央研究所では、研究員が顧客企業と事業機会を探るワークショップを盛んに開いている(写真:吉村昌也)
東京・国分寺市にある日立の中央研究所では、研究員が顧客企業と事業機会を探るワークショップを盛んに開いている(写真:吉村昌也)

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