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ソフトバンクグループが半導体設計の英アームを米エヌビディアに売却すると発表した。売却額は最大400億ドル(約4兆2000億円)。アームを2016年に約3兆3000億円で買収してから4年。ソフトバンクGは価値を1兆円近く増やした格好だが、無事に取引を完了させるまでの道のりは険しそうだ。

 「インテルやクアルコムのようなシナジー(相乗効果)がすぐ見える会社が買いに来るというのは独占禁止法上成り立たない」

 16年7月、ソフトバンクGがアームを買収すると発表した直後の決算説明会。孫正義会長兼社長はこう語り、シナジーが直接的に見えないからこそ「無風状態で買いに行けた」と強調した。

2016年7月の決算説明会でアームの買収について語るソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 それから4年、ソフトバンクGがアームの売却先に選んだのはシナジーが見えやすいエヌビディアだった。コンピューター内で映像を描画する半導体「GPU」を手がける企業として1993年に創業したエヌビディア。大量の同じ処理を並列に実行できるGPUの特性を生かして2015年ごろからAI(人工知能)の学習や推論での利用を促進したことが功を奏し、売上高も株価も上昇。20年7月には時価総額で米インテルを抜き、米国の半導体メーカーとして首位に立った。9月14日時点の時価総額は3176億ドル(約33兆3500億円)に達する。

 「アームとともにAI時代の最高峰のコンピューティング企業となる」。エヌビディアのジェンスン・ファンCEO(最高経営責任者)は日本時間14日に開いた電話会見でこう意気込んだ。

 アームは、半導体に形成するCPU(中央演算処理装置)などの回路の設計図や、プログラムから見たCPUの仕様(「命令セットアーキテクチャー」と呼ばれる)を半導体メーカーにライセンス提供する企業。スマホや家電などの心臓部の半導体のほとんどがアームのCPU仕様を採用していることで知られる。エヌビディアも任天堂の主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」に供給する半導体や自動車向け半導体にアームのCPUを採用している。

 理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピューター「富岳」の半導体がアームの仕様を採用するなど、家電からスパコンまでのあらゆる半導体に広がるアームのCPU。AIの処理を得意とするエヌビディアのGPUとの連携を強化することで、クラウドからロボットや家電までの広範囲にわたってエヌビディアの半導体を提供するチャンスが生まれる。エヌビディアはアームのライセンス提供の事業に自社のGPUを加える相乗効果もあると説明している。