2021年12月22日に開催された厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会。米製薬企業バイオジェンの日本法人が申請していたアルツハイマー病治療薬「アデュヘルム点滴静注」(アデュカヌマブ)について審議が行われた。部会は「有効性を判断するのは困難」として承認を見送り、継続審議することを決めた。アデュヘルムをバイオジェンと共同開発してきたエーザイにとって誤算には違いないが、本命は別にある。

アデュヘルムは臨床試験のデータの再提出を待って再度審議される。ただし、新たな臨床試験を実施するには年単位の時間がかかる見通し。アデュヘルムの継続審議が決まった翌日、エーザイの株価は前日終値の7122円から9%下落して6477円になった。
ところが、エーザイの株価は徐々に持ち直している。24~27日にかけて上昇し、27日の終値は6666円となった。バイオジェンと共同開発する別のアルツハイマー病新薬候補「レカネマブ」が、24日に米食品医薬品局(FDA)の「優先審査」(ファストトラック)の指定を受けたのだ。関係者の間では以前から、有害事象がより少ないレカネマブを本命視する声が多かった。
2つの臨床試験で相反する結果に
継続審議となったアデュヘルムは、アミロイドβというたんぱく質を取り除く抗体医薬だ。アルツハイマー病患者の脳内にはアミロイドβが沈着していることが知られており、認知症の前段階や発症初期にこれを取り除いて治療することを狙った。
ただ、アミロイドβが脳内にたまることがアルツハイマー病の原因であるというのはまだ仮説にすぎない。バイオジェンとエーザイは重症化を抑えられることを示そうと、軽度認知障害や認知症発症初期の患者にアデュヘルムを投与する臨床試験を実施してきた。ところが、2つの臨床試験の結果は相反するものだった。一方では重症化の抑制を示したが、もう一方では示せなかった。それでもFDAは21年6月、脳内へのアミロイドβの蓄積が減少したというデータに基づき、有効性の再検証を条件として迅速承認していた。
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