
MSDの親会社である米製薬大手メルクのロバート・M・デイビス会長兼最高経営責任者(CEO)が来日し、2022年12月8日にメディアの取材に応じた。21年7月1日にCEOに就任して以来、初めての来日となったが、「世界第3位の日本市場を重視している」と繰り返した。
同社の業績は好調だ。21年通期の全世界売上高は前年同期比17%増の487億ドルとなった。22年も好調を持続しており、22年通期の全世界売上高の見通しは同20~21%増えて585億~590億ドルになると、22年11月に上方修正している。
新型コロナウイルス感染症禍が継続する中で、新型コロナに対する経口抗ウイルス薬の「ラゲブリオ」を投入したことが好業績の一因だが、それ以上に業績拡大を強くけん引しているのが免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれるタイプの抗がん剤「キイトルーダ」だ。キイトルーダの売上高は21年、為替の影響を除くと前年同期よりも18%増え、メルクの売上高全体の3分の1に当たる172億ドルとなった。22年も2桁成長を堅調に続けており、9月末までの売上高は前年同期よりも23%増の154億ドルとなっている。
ところが日本では状況が大きく異なる。日本法人のMSDが開示しているデータによると、キイトルーダの四半期ごとの売上高のピークは350億円を超えた19年第3四半期。その後、19年末までに腎細胞がんと頭頸(けい)部がん、20年に食道がん、21年には「トリプルネガティブ」と呼ばれる難治性の乳がん、「MSI-High」と呼ばれるタイプの結腸・直腸がん、子宮体がんなど、対象となるがんの種類を増やしながら、売上数量は伸ばしてきた。
デイビスCEOは、「キイトルーダは日本においても成功している製品で、多くの患者に貢献している」と胸を張った。だが、数量ベースでは増加しながらも、19年の第4四半期以降、四半期ごとの売上高は300億円前後で頭打ちになっている。理由は、適応症の追加などによってトータルの売上高が増えれば薬価引き下げにより単価を引き下げられてしまうからだ。キイトルーダは売上高を伸ばした製品を標的にした「市場拡大再算定」と呼ばれる仕組みによりこれまでに何度も薬価を大きく引き下げられてきた。
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