武田薬品工業は2020年12月9日、開発中の品目のうち2024年度までに発売する予定の「ウエーブ1」と称している12の新薬候補品に関する説明会を開催。プレゼンテーションを行ったクリストフ・ウェバー社長CEOは、「2030年度までに売上収益5兆円の目標達成に自信を持っている」と強調した。

クリストフ・ウェバー社長CEO(写真:的野弘路、2018年撮影)
クリストフ・ウェバー社長CEO(写真:的野弘路、2018年撮影)

 アイルランドのシャイアーと合併して以来、武田薬品の業績のけん引役となっているのは、14のグローバルブランドと称している既に発売済みの製品群だ。今回の説明会でも、2024年度までの5年間は14のグローバルブランドが大きく成長し、「80億ドル以上の収益上乗せの機会がある」とした。

 ただ、問題はこのグローバルブランドのうち最大の製品であり、2019年度には1製品で32億ドルもの売上収益をもたらした炎症性腸症候群治療薬の「エンタイビ オ」の特許が、2024年以降に満了することだ。今回の説明会でもウェバー社長は、欧州では2024年5月、米国では2026年5月にエンタイビオのバイオシミラー(バイオ医薬品の後発品)が他社から登場する可能性があることを明かし、それをどうやって挽回するかが課題であるとの認識を示した。

睡眠障害治療薬などで大型化の期待

 その懸念を払拭する役割が期待されているのが、同社が2024年度までに発売することを見込み、「ウエーブ1」と称している12の開発候補品だ。同社はシャイアー統合後の2019年11月に開催した説明会で初めて、「ウエーブ1に12の候補品があり、各品目のピーク時売上収益の合計は100億ドルを超えるポテンシャルがある」として成長の可能性を強調した。だが、アナリストの間からは「小粒のものが多く、エンタイビオの特許切れによる収益減を埋め切れないのではないか」との声も漏れていた。

 その後、約1年が経過し、ウエーブ1にあった1品目が2025年度以降に発売予定とされるなど、開発スケジュールに少し修正はあったが、新型コロナウイルス感染症向けの血漿(けっしょう)分画製剤がウエーブ1に加わり、12の品目数に変更はない。加えて今回は、それぞれのピーク時売上収益の可能性をどう見ているかについても開示した。

 それによると、ナルコレプシーという睡眠障害を対象とする候補品や、血栓性血小板減少性紫斑病という疾患の治療薬、血液がんに対する抗がん剤、デング熱予防ワクチンなどが10億ドル以上の大型品になる可能性があるとのこと。「12品目全てが成功するかは分からないが、いずれも臨床試験の後半に進んでおり、大半は成功すると確信している」とウェバー社長CEOは強調した。

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