11月22日に厚生労働省が緊急承認した塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ錠」
11月22日に厚生労働省が緊急承認した塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ錠」

 厚生労働省は11月22日、塩野義製薬が緊急承認制度を使って承認申請していた新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ錠」(エンシトレルビルフマル酸塩)を緊急承認した。症状が現れてから3日以内の軽症から中等症Iの12歳以上の患者に対して、初日は3錠を1日1回、以後5日目まで1錠を1日1回投与する。

 新型コロナの飲み薬としては、米製薬メルクの日本法人であるMSDの「ラゲブリオ」、米ファイザーの「パキロビッド」に続いて、日本で3つ目となった。

 ゾコーバ錠は、5月に医薬品医療機器等法(薬機法)改正で設けられた緊急承認制度に基づいて承認された第1号でもある。承認取得までには曲折があった。塩野義は2月、実施中の臨床試験の第2b相と呼ばれる段階までのデータを用いて条件付き承認制度の適用を希望して申請した。だが、5月の薬機法改正で緊急承認制度ができたため、緊急承認制度の適用希望に切り替えたという経緯がある。

 厚労省は6月と7月に薬事・食品衛生審議会の分科会や部会を開催して審議したが、「得られている情報からは有効性が推定できるとは判断できない」として承認を見送った。実施中の臨床試験の「第3相パート」の結果が近く判明する見通しであることから、その結果を踏まえて、改めて審議することになった。

 9月28日に塩野義は、日本、韓国、ベトナムで行われた第3相パートで主要評価項目を達成したとする速報結果を発表した。このデータを基に当局が審査を行い、11月22日に審議会の分科会と部会の合同会議が開催されて専門家らが審議を行い、緊急承認を了承。これを受けて厚労相が同日に緊急承認したという経緯だ。

緊急承認に対して異論も

 緊急承認に対して、審議では委員から異論も出た。1つは既に新型コロナに対する飲み薬が2つある状況で、緊急承認の要件を満たしているのかという点だ。もっとも、ラゲブリオとパキロビッドは「重症化リスクを有する患者」を対象としており、重症化リスクがない患者、つまり高齢者でもなく、基礎疾患もない患者に使える飲み薬はこれまでなかった。また、既承認の2剤はともに輸入品であり、厚労省は「安定供給の観点では、国産品はまだ承認されていないので要件となり得る」と説明した。

 半面、重症化リスク因子のない軽症例の多くは自然に改善するため、日本感染症学会が作成するガイドラインには、「症状を考慮した上で投与を判断すべきである」「臨床試験における成績等を踏まえ、高熱・強いせき症状・強い咽頭痛などの臨床症状がある者に処方を検討すること」などとも記載される予定だ。

 また、臨床試験での有効性の推定は発症から3日目までに投与開始された患者を対象としているため、ガイドラインには症状が生じてから、「遅くとも72時間以内に初回投与すること」とも記された。ラゲブリオとパキロビッドは「発症から5日以内」の軽症から中等症Iの患者を対象としており、これらよりもさらに早期段階に限定して使われることになりそうだ。

 一方、ゾコーバは薬物を分解するある酵素の働きを妨げるため、併用してはいけない薬が多くある。添付文書で「併用禁忌」とされた薬は36種類あり、高血圧や脂質異常症の薬など、比較的多くの人が使用している薬も含まれている。

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