2021年12月期第3四半期決算で通期の売上収益の予想を1700億円上方修正した中外製薬。上方修正要因の半分近くを占めるのが、期初には織り込んでいなかった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)向けの抗体カクテル製剤「ロナプリーブ」の販売。COVID-19が一時的な追い風になった格好だが、奥田修社長CEO(最高経営責任者)は来期以降の好業績の継続に自信を示した。その自信のわけは。

スイス・ロシュが米リジェネロンと共同開発した抗体カクテル製剤「ロナプリーブ」
スイス・ロシュが米リジェネロンと共同開発した抗体カクテル製剤「ロナプリーブ」

 スイス・ロシュ傘下の中外製薬は、ロシュが米リジェネロン・ファーマシューティカルズと共同開発してきたCOVID-19向けの抗体カクテル製剤「ロナプリーブ」の日本での開発・販売権を得て、21年7月から国内での販売を開始した。COVID-19の軽症から中等症の患者に使える初めての治療薬として、売上高を急速に伸ばした。7~9月のロナプリーブの売上高は428億円。通期で823億円に達する見込みだ。

 さらなる上乗せの可能性もある。中外は10月、ロナプリーブを予防目的と無症状の感染者の治療に使えるようにすることと、点滴ではなく皮下注射で投与できるようにすることを目指した申請をした。これらが承認されれば売上高の拡大に弾みがつくだろう。

 ロナプリーブだけではない。全身の炎症反応を抑える作用を持つ関節リウマチ治療薬「アクテムラ」だ。6月に米国でCOVID-19に対する緊急使用許可を受けたほか、9月に欧州で承認申請済み。日本でも年内にCOVID-19向けの承認申請をする見通しだ。期初には21年12月期の関節リウマチを中心とするロシュ向けの輸出が830億円と説明していたが、アクテムラの海外販売は通期で1027億円になる見通し。約200億円の増加分がCOVID-19の需要とみられる。

 COVID-19が業績に大きなプラス影響を与えた中外製薬は、21年12月期の「連結コア純利益」が過去最高の2930億円になる見通し。だが22年以降に目を向けると、競合企業による治療薬開発や感染者数の状況次第では、ロナプリーブやアクテムラの販売が減速する可能性もある。ロシュが米アテア・ファーマシューティカルズと提携して開発している経口抗ウイルス薬AT-527の日本での開発・販売権を獲得し、共同でグローバルの第3相臨床試験を実施中だが、懸念も出てきている。アテアが「AT-527の第2相試験で目標を達成できなかった」と10月に発表したことを受け、第3相試験を見直す方針だ。

 それでも、中外製薬の奥田修社長CEOは「来期(22年12月期)も過去最高を目指す」と、好業績の継続に自信を見せる。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り863文字 / 全文1945文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「橋本宗明が医薬・医療の先を読む」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。