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 ノーベル賞受賞者に選ばれたライス氏は、HCVが感染した細胞内で自分の複製をつくりだすメカニズムの研究を重ねてきた。遺伝子の配列を詳細に検討した上で、1997年に試験管内でつくり出したウイルスの配列がチンパンジーに感染し、肝炎を引き起こすことを見いだした。

 ライス氏はその後も、複製をつくり出す仕組みの研究を続け、HCVが増殖しやすい培養細胞をつくり出すことに成功した。これにより、実験室内でHCVの感染や増殖の実験ができるようになり、その後の治療薬の開発に弾みがついた。

 ちなみに、国立感染症研究所の現所長であり、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバーとしておなじみの脇田隆字氏は、培養細胞の中で増殖しやすいHCVのウイルス株を発見して、この分野の研究の進展に大きく寄与している。

インターフェロンの課題を解決

 C型肝炎に対する治療としては、1989年にHCVが⾒いだされる前後から、インターフェロン製剤をベースとする治療が行われてきた。インターフェロンは生理活性たんぱく質の1つで、リバビリンという薬と組み合わせることで、一定の割合でウイルスを排除できることがわかり、2010年ごろまではこの治療法が主流になっていた。

 ただし、インターフェロン製剤を使った治療には、いくつかの課題があった。ウイルスのタイプによっては効果が低いこと、また、様々な副作用が現れ、特にうつ症状などの精神症状が見られることなどだ。