リボヌクレオチドという物質が20個程度つながってできたRNA干渉(RNAi)薬と呼ばれるタイプの治療薬がある。2006年にノーベル生理学・医学賞の受賞対象となった生命科学現象に基づいて創薬されたもので、米アルナイラム・ファーマシューティカルズが同分野のリーダー企業として知られる。同社は22年9月26日、日本で3つ目となるRNAi薬の承認を取得した。3製品はいずれも希少な遺伝性疾患を対象にしたものだが、米欧ではライセンス先のノバルティスがコレステロールを低下させる循環器疾患向けのRNAi薬の承認を取得している。

 「18年に米国で初めて承認を取得して以来、4年間で5つのRNAi薬を発売してきた。最初は希少疾患を対象に研究開発に取り組んできたが、循環器領域などの、より一般的な疾患をターゲットにできるようになってきた。RNAi薬は新たな章が始まった」。このほど来日したイボンヌ・グリーンストリート最高経営責任者(CEO)はこう口にした。

米アルナイラム・ファーマシューティカルズのイボンヌ・グリーンストリート最高経営責任者(CEO)(写真=柴仁人、以下同)
米アルナイラム・ファーマシューティカルズのイボンヌ・グリーンストリート最高経営責任者(CEO)(写真=柴仁人、以下同)

 アルナイラムでは02年の設立から21年まで、現在、武田薬品工業の社外取締役などに就くジョン・マラガノア氏がCEOを務めてきたが、21年後半にグリーンストリートCEOに交代した。医師でもあるグリーンストリートCEOは、英グラクソ・スミスクライン、米ファイザーなどを経て、16年に最高執行責任者(COO)としてアルナイラム入りした。

 来日したグリーンストリートCEOに、RNAi薬の可能性や、アルナイラムの成長戦略などを聞く機会があった。まず、RNAi薬について少し説明しておこう。

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