「個人資産を中心に数百億円を投じてきた」

 楽天の三木谷浩史会長兼社長がこう語るプロジェクトが動き始めた。米楽天メディカル(カリフォルニア州)の日本法人である楽天メディカルジャパン(東京・世田谷、虎石貴社長)は9月25日、厚生労働省から光免疫療法と呼ばれる新たなタイプのがん治療に用いる医薬品「アキャルックス」の承認を取得。29日に米楽天メディカルの会長兼CEO(最高経営責任者)で、楽天メディカルジャパンの代表取締役会長も務める三木谷氏らが出席して記者説明会を開催した。

 この説明会には、光免疫療法の考案者である米国立衛生研究所(NIH)の主任研究員の小林久隆氏、米楽天メディカルの前身であるアスピリアン・セラピューティクスのCEOとして2013年から小林氏の研究成果の開発を手掛けてきた、現・楽天メディカルのバイスチェアマンCSO(最高科学責任者)であるミゲル・ガルシア・グズマン氏らが登壇し、それぞれの思いを口にした。

 小林氏が考案した光免疫療法は、光感受性物質をがん細胞の表面に集まる性質を持つ抗体に結合し、がん細胞に集まったところでレーザー光を照射して光感受性物質を活性化し、がん細胞を破壊する治療法だ。

各種の制度を活用、約6カ月でスピード承認

 楽天メディカルのアキャルックスは、セツキシマブという抗体医薬とIRDye700DX(以下、IR700)という光感受性物質を結合した医薬品だ。現在、再発頭頸部(とうけいぶ)がんを対象とする国際共同の比較試験を実施しているところだが、その結果を待たず、海外と日本で実施した早期臨床試験のデータを基に3月に承認申請を実施した。

 厚労省は、有効な治療法が乏しく、患者数が少ないなどの理由で大規模臨床試験が困難な医薬品などに対して、発売後に有効性・安全性を評価することを条件に承認する条件付き早期承認制度を設けており、アキャルックスにはそれを適用した。同省の先駆け審査指定制度の対象品目にも指定されていたことから、申請から約6カ月で、外科手術では切除できない局所進行または局所再発の頭頸部がんを対象に、スピード承認された。承認申請に用いられたデータによると、海外では39人に投与されたが、そのうち2つ目の試験では30人に投与されて43.3%に部分的も含めて効果が見られ、日本では3人中2人で部分的な効果が見られた。

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