スタートアップのCureApp(東京・中央、佐竹晃太代表取締役社長)は9月3日、高血圧症治療用アプリを5月に厚生労働省に申請したことを発表した。このアプリの治験結果は、8月末に開催された欧州心臓病学会で自治医科大学の苅尾七臣教授が発表している。それによるとアプリを使わずに生活指導だけを行った場合に比べて、アプリを12週間使用すると高い降圧効果が得られたという。CureAppは2022年にも、保険診療の中で医師がアプリを処方して生活指導に使えるようにしたい考えだ。アプリを使った生活指導により、薬を使わなくても血圧をコントロールできる日が来るのだろうか。

保険診療向け以外に、一般向けの禁煙指導アプリも開発・提供している
保険診療向け以外に、一般向けの禁煙指導アプリも開発・提供している

 CureAppの高血圧症治療用アプリは、患者の日々の血圧や生活行動のデータを収集・解析し、生活習慣の改善を促すメッセージを表示するスマートフォン上のアプリだ。医師はウエブを通じて患者の状況を確認できるが、睡眠の質、減塩、節酒、運動、体重管理、ストレス管理という6つの生活習慣に対して改善を促すメッセージは、アプリが自動的に出す。医師にとってみればアプリの利用により、患者に接する時間を増やさなくても、従来1カ月や数カ月に一度の診察時にのみ行っていた生活指導を日常的に行えるようになる。患者にとっては生活習慣を改善するためのアドバイスを日常的に受けられる利点がある。

 20年1月から12月に実施した治験には、20歳以上65歳未満の高血圧症の男女約400人が参加した。4週ごとに来院して日本高血圧学会が定めるガイドラインに基づく標準的な生活習慣の改善指導だけを受けるグループと、ガイドラインに基づく指導に加えてアプリを利用するグループに分けて評価した。すると、12週後の血圧はアプリを利用したグループのほうが改善していた。「早朝の家庭血圧(家庭での測定値)の改善状況は、アプリを使わないで生活指導を行っただけの場合に比べて、脳卒中を12%、心不全を9%減らすことに相当する」と苅尾教授は説明する。

 治験では、12週からはどちらのグループも必要に応じて降圧薬を処方できることにして24週目まで観察を続けた。すると、24週目時点でアプリを利用しないグループで薬の処方を受けていたのが49.7%だったのに対して、アプリを利用したグループで処方を受けていたのは40.8%だった。「アプリの利用によって薬を少なくできることを示唆するデータだ」と苅尾教授は話す。

 CureAppはこの治療用アプリの承認申請を既に済ませ、22年の承認取得、保険適用を目指している。同社は20年12月にニコチン依存症治療用のアプリを発売しており、高血圧症治療用アプリが承認されれば、医師の処方で使える治療用アプリの第2段となる。

 ニコチン依存症治療用アプリは、呼気中の一酸化炭素(CO)を測定するデバイスとセットで利用し、医師が処方する際に診療報酬として2万5400円を請求できる仕組みだった。高血圧症治療用アプリは、一般の血圧計で測定した血圧を入力すればいいので、アプリのみで構成された製品になる見込みだ。ニコチン依存症治療用アプリの場合は、禁煙に成功するまでの一定期間使用することになるが、高血圧症治療用アプリは長期間継続して使用することも想定される。ニコチン依存症向けのアプリとは、保険点数の設定方法も異なるだろうし、事業のやり方も異なるだろう。

続きを読む 2/2 佐竹社長に先行きを聞いた

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