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睡眠脳波計装着のイメージ

 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS:トリプルアイエス)は、文部科学省の「世界トップレベル研究拠点プログラム」に基づいて2012年に設置された睡眠に関する世界的な研究拠点である。機構長を務める柳沢正史教授は、米テキサス大学時代に脳を覚醒させるオレキシンという脳内物質を見いだした睡眠に関する基礎研究の第一人者だ。

 その柳沢機構長が取締役会長CSO(最高戦略責任者)を務める筑波大学発ベンチャーのS'UIMIN(茨城県つくば市、藤原正明社長)は、このほど自宅で高精度な測定ができる睡眠計測サービス「InSomnograf」の提供を開始した。

1週間分のデータでリポート作成

 S'UIMINからレンタルされた睡眠脳波計を用いて自宅で1週間、睡眠時の脳波などを計測して送り返すと、数日後に睡眠状態の評価リポートが送られてくるというものだ。脳波計は、電極のシートとデバイスからなっており、額と両耳の後ろにシートを貼り付けて就寝すると、睡眠中の脳波と筋電図をデバイスが計測する。

電極のシート(上)とデバイス

 デバイスに記録された1週間分のデータは、S'UIMINが開発した人工知能(AI)が解析し、覚醒か、脳は覚醒しているレム睡眠か、脳が覚醒に近い状態にあるノンレム睡眠か、ノンレム睡眠の場合はその眠りの深さを判定。そのデータを基に、正味の睡眠時間、ベッドインしてから寝付くまでの時間、中途覚醒の時間、睡眠の効率(ベッド上にいる間の就寝できていた割合)、睡眠の規則正しさ、眠りの深さなどを判定し、睡眠の状態を評価したリポートを作成する。

評価リポートのイメージ

 S'UIMINは、もともとこの睡眠脳波計を医療機器として開発することを目指してきたが、研究機関や企業などからの引き合いが多かったため、BtoBのサービスを前倒しで開始することにした。医療機器としての認証取得は2021年の半ばから取り組む計画で、それまでにデバイスをIoT化して計測したデータをクラウドにアップロードし、前夜の睡眠状態を利用者が毎朝確認できるようにするなどの改良を施す考えだ。

従来の測定法には課題があった

 柳沢教授がS'UIMINを設立して睡眠脳波計やAIの開発に取り組んできた動機は、医療において正確に睡眠を検査する方法に課題があったからだ。睡眠検査の標準的な手法としては、終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査があるが、検査実施可能な施設が限られているうえ、入院して体に数多くの電極を付けて行う必要がある。このため、普段の睡眠状態を計測できているのか確信が持てなかった。