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(写真:PIXTA)

 8月24日に武田薬品工業の大衆薬子会社である武田コンシューマーヘルスケア(TCHC)を買収すると発表した米ザ・ブラックストーン・グループ(以下、ブラックストーン)が、TCHCと共同で記者会見を開催した。

 ブラックストーンは60兆円以上の資金をグローバルで運用する世界有数の投資会社で、株式時価総額は約7兆円と武田薬品を上回るものの、日本での知名度は高くない。そのブラックストーン傘下で、武田薬品の大衆薬事業は息を吹き返せるのだろうか。

TCHC社内に強いアレルギー反応か

 9月3日に開催した会見で、ブラックストーンのプライベートエクイティ部門日本代表である坂本篤彦氏の説明は、TCHCの従業員への配慮が行き届いたものだった。

 従業員の雇用や、経営陣については武田薬品から派遣されている取締役以外、社長を含めて現状を維持することを明言。「現場ではブラックストーンのチームが一緒にやっていくことはあるが、何らかのポストに就くことはない」と語り、企業文化を含めて一切変える考えがないことを強調した。

 そこまで言及したのは逆にTCHC社内に強いアレルギー反応が生じているからだろう。

 実際、TCHCの野上麻理社長は、「社員のほとんどは武田薬品に入社したので、譲渡されると聞いて残念な思いを抱いているとの声を聞く。ブラックストーンとはどういう会社なのか、将来どうなるのかという不安の声がある」と認めた上で、「全員を転籍させるのが私の責任だ。丁寧に説明していきたい」と語った。

 しかしながら、TCHCの社員はこれまでと同じ仕事をしていればいいというわけではないだろう。

業績はここ数年低迷してきた

 TCHCの業績はここ数年低迷してきた。TCHCの会社案内によると売上高は2016年度には826億円だったが、2017年度799億円、2018年度641億円、2019年度609億円と下落を続けた。

 ブラックストーンの坂本氏は、「消費者調査をしたところ、アリナミン、ベンザなどのブランドの認知度、信頼性は高かった。しかし、大衆薬事業は武田薬品の中で非中核事業と位置付けられ、ここ数年、新製品も出せず、成長への投資も行き届いていなかった。とはいえ、大衆薬市場自体は0.5%から1%の安定成長が望める市場なので、これまでの事業基盤と強いブランド力を生かせば成長できると考えた」などと説明した。

 そして、ITシステムなど様々なところで支援はするし、補完的な案件があればブラックストーンが資金を供給する形で企業買収などを行う可能性があるものの、基本的にはTCHCが自律的に成長できるという考えを示した。

稼いだ分を積極的に再投資してもらいたい

 では、武田薬品からブラックストーンの傘下に移行することで本当にTCHCは成長できるのだろうか。