「サイエンス・ベースド・ブルーイング・テクノロジー(科学に基づく醸造技術)を提唱したい」。8月26日に開催したキリングループのR&D説明会で、キリンホールディングス(HD)R&D本部キリン中央研究所に所属する谷口慈将主任研究員は胸を張ってこう述べた。「結晶スポンジ法」という、東京大学大学院工学系研究科の藤田誠卓越教授が見いだした分析方法を用いれば、ビールの味や品質に関わる成分を突き止めることができ、科学的に味や品質を制御できるというのだ。「結晶スポンジ法」とは一体何なのか。

 結晶スポンジ法は小さな分子の立体構造を解析する革新的な手法だ。分子の立体構造は、結晶化してからX線回折という方法で解析する手法が100年以上前に考案された。その後、幾つか新しい手法も登場したが、立体構造を直接観測できるという点で、現在も結晶のX線回折法が信頼性の高い手法と考えられている。ただし、サンプル量が少ない物質は結晶を作るのが難しく、そもそも結晶化するのが困難な物質も少なからずあるのが難点だ。

スポンジ状の構造体を用い、ナノ空間に分子を規則正しくとじ込めてX線回折をする
スポンジ状の構造体を用い、ナノ空間に分子を規則正しくとじ込めてX線回折をする

 結晶スポンジ法は、内部に規則的なナノメートルサイズの空間を多数持ったスポンジ状の構造体(結晶スポンジ)を用い、1つ1つのナノ空間に分子を規則正しく閉じ込めてX線回折をする手法だ。この手法を用いれば、結晶化が困難な物質であっても、微量のサンプルを基に立体構造を解析できる。

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