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(写真:PIXTA)

 安倍晋三総理が辞任の理由として挙げた潰瘍性大腸炎は、難病に指定されたやっかいな病気だ。大腸の粘膜に潰瘍やただれができる炎症性の疾患で、下痢や下血、腹痛を繰り返し、重症の場合は手術で大腸を全て取らなければならない場合もある。

 幾つかの治療薬があるが、薬で完全に治って再発しないのは1割程度とされ、8割ぐらいの患者は一時的に症状は治まっても再び発症する「再燃寛解型」と呼ばれるタイプに分類される。さらに残り1割は、半年以上にわたって症状が治まらない慢性持続型と呼ばれる。

大腸で溶け出すアサコール

 安倍総理が2007年8月に総理を辞任した理由も、この病気の悪化だった。ただ、2009年12月に登場した「アサコール」という新薬を使うことで症状をコントロールできたようだ。2012年9月に総理に返り咲いてからは、7年8カ月にわたる長期政権を実現できた。

 アサコールは、炎症を抑えるメサラジンという物質を有効成分とする医薬品で、5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA製剤)と呼ばれる。5-ASA製剤は以前から潰瘍性大腸炎の治療に使われてきたが、アサコールではアルカリ性の環境で溶けるコーティングで覆うことによって、飲み薬でも大腸で薬効成分が溶け出して効果を発揮するようになった。5-ASA製剤にはアサコールのような飲み薬以外にも、座薬や、肛門から腸に注入する製剤もある。

 軽症の潰瘍性大腸炎でまず行われるのは、この5-ASA製剤による治療だ。それで改善しなければ、強く炎症を抑えるステロイドを投与する。ただし、ステロイドの内服を続けると、糖尿病や骨粗しょう症などの副作用が生じることが知られており、症状をうまくコントロールできればステロイドを徐々に減らして、5-ASA製剤だけを使い続ける。

 ところが、5-ASA製剤とステロイドだけでは効果が見られない、もしくはステロイドをなかなかやめられない場合がある。そうなると別の薬を検討しなければならなくなる。安倍首相も新しい薬の使用を検討していると明かしたが、恐らくこの状態になったのだろう。

「手術症例は減っているように思う」

 だが、こうした難治症例に使える新薬もここ数年の間に続々と登場している。