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(写真=PIXTA)

 東日本大震災の復興事業の一環として、東北大学が中心となって2011年度から行ってきた東北メディカル・メガバンク計画では、宮城県と岩手県で地域住⺠の⻑期健康調査を行い、健康管理に役立てると共に医学研究にも利用しようと取り組んでいる。

 その中で一番の目玉は、約2万人の妊婦の協力を得て収集した、出生児とその両親、祖父母の健康医療情報と血液、尿などの生体試料から成る「出生三世代コホート調査」である。この調査で収集した生体試料と情報は「バイオバンク」として保存されており、家系情報付きで遺伝や生活習慣と病気などの関係を研究できる宝の山だ。

 東北大の東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)はこのほど、合計7万人分の出生三世代コホートのバイオバンクの提供を開始。全国の研究者による壮大な宝探しが始まった。

集団のデータを追う「コホート研究」

 ToMMoは岩手医科大学と共同で2013年から2017年にかけ、産婦人科医療機関で妊婦に呼び掛けて、研究に利用する同意を得た上で生体試料や健康医療情報を収集してきた。

 それによって構築したバイオバンクは、2019年8月31日時点で、2万3143人の出生児と、2万2493人の母親、8823人の父親、9459人の出生児の兄弟、4283人の母系の祖母、1658人の母系の祖父、1324人の父系の祖母、793人の父系の祖父のデータから成る。

 ToMMoでは、2043年度までの30年間にわたってこの約7万人を対象に追跡調査を行い、生活習慣などの環境要因や、遺伝の健康への影響などを調べていく。

 患者などの集団のデータを一定期間追跡して行うこうした研究を「コホート(集団)研究」と言う。そして世界中で様々なコホート研究が行われている。しかし出生時点から、しかも両親、祖父母の情報も併せて、この規模で収集されたものは極めて珍しい。世代間で体質や疾患などを比較することで、遺伝子や環境の影響をより明確に分析できるというわけだ。「世界で唯一といっていい」と、ToMMoの三世代コホート室室長である栗山進一東北大教授は胸を張る。

追跡調査のデータも順次提供

 今回ToMMoが提供を開始したのは、最初に登録したときの「ベースライン調査」だ。それだけでも、明らかにできることは幾つもある。例えば妊婦が妊娠高血圧症候群であることと低出生体重との関係などだ。

 これに加えて、ToMMoでは追跡調査のデータも順次提供していく計画だ。それを利用すれば、例えば胎児期や出生直後の健康・栄養状態が、成人になってからの健康に影響を及ぼす「DOHaD仮説」なども検証できる可能性がある。

 バイオバンクの中でも、出生児とその両親、父系、母系の祖父母を含めた3世代7人以上のデータを収集できている158組については、ゲノム(全遺伝情報)を解析した情報も含めて、2020年1月から先行して提供してきた。遺伝情報の影響を詳細に分析できることから、これを研究に使って、既に幾つかの成果が出ているという。