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 武田薬品工業が大衆薬(OTC)事業の譲渡を決めた。譲渡先は米投資ファンドのブラックストーン・グループとその関係会社が運用するプライベートエクイティファンドが管理する買収目的会社。ブラックストーンは、2019年に鎮痛剤の「カロナール」などを主力品とするあゆみ製薬(東京・中央)を買収するなど、日本ではヘルスケア分野で存在感を高めている。

 同社は武田薬品のOTC事業子会社である武田コンシューマーヘルスケア(TCHC)の企業価値を2420億円と評価しており、今後、その有利子負債や運転資本などを調整して譲渡価格を決定する。

合計の売却額は目標に達する

 武田薬品は、アイルランドのシャイアーを買収することで拡大した負債を削減するために、計100億ドルの目標を掲げてノンコア(非中核)事業の資産売却を進めてきた。今回のTCHCの譲渡により、合計の売却額は目標に達することになった。

 だが、24日に開催した説明会でクリストフ・ウェバー社長兼CEOは、「今回の譲渡はシャイアーの買収とは無関係」「資産売却が目的ではなく、ビジネスの価値を高めることが目的」「コンシューマービジネスが成長できる正しい戦略を選択した」などと語った。

シャイアー買収で会見するクリストフ・ウェバー社長兼CEO(写真は19年1月、西村尚己/アフロ)

 そもそも医療用医薬品とOTCとは、同じ薬ではあるものの事業規模もビジネスモデルも全く異なる。医療用医薬品はグローバルビジネスであり、世界全体で1000億円以上を売り上げる「ブロックバスター」と呼ばれる医薬品が100品目以上存在している。

 これに対して一般用医薬品は各国の医療制度に依存する要素が大きいためローカル色が強く、日本の場合はOTC市場は医療用医薬品市場の10分の1程度で推移している。TCHCの主力ブランドであるアリナミンでも、錠剤とドリンク類を合わせて2017年度の売上高は409億円だ。

OTC市場では苦境に立たされている

 そのOTC市場で武田薬品は目下、苦境に立たされている。武田薬品はOTC事業を強化するとして2017年にTCHCを子会社として独立させた。そのTCHCの2018年の会社案内によると、同社の売上高は2016年度に826億円を記録していたが、ブラックストーンへの譲渡に伴う開示資料によると2017年度の売上高は799億円、2018年度には641億円、2019年度には609億円にまで落ち込んでいる。

 開示基準などが異なる可能性はあるが、売上高が下落傾向にあるのは確かだろう。売上高が急落している理由について、説明会で武田薬品のコーポレートストラテジーオフィサー&チーフオブスタッフでもある古田未来乃TCHC会長に質問したところ、「市場の停滞や投資不足、その他様々な要因が重なっている」と分析。「ブラックストーンの傘下に入れば適切な投資をしてもらって成長していけると確信している」などと説明した。