住友ファーマの大阪本社
住友ファーマの大阪本社

 住友ファーマが2022年7月29日に発表した22年度第1四半期(4~6月)の決算は、一見好調に見える。売上収益の通期予想に対する進捗率は29.1%、コア営業利益の同進捗率は44.6%で、このままなら通期予想を大きく上回って着地してもおかしくない。だが、好調に見えるのは一時金収入や為替の影響が主因であるとして、同社は通期予想を据え置いた。

 そもそも19年4月に発表した中期経営計画では、22年度の目標として、売上収益6000億円、コア営業利益1200億円を掲げていたが、21年5月にコア営業利益を600億円に下方修正し、さらに22年5月には売上収益5500億円、コア営業利益300億円とする通期業績予想を発表した。

 度重なる下方修正の原因は、2021年度に北米だけで連結売上収益の3分の1以上に相当する2041億円を稼いだ主力の抗精神病薬「ラツーダ」の穴を埋めると期待した製品が、順調に育っていないことだ。

 同社は2019年に総額30億ドル(当時のレートで約3200億円)を投じて英国とスイスに本社を置くロイバント・サイエンシズと戦略的提携を交わした。提携で獲得した前立腺がん治療薬の「オルゴビクス」(レルゴリクス単剤)、⼦宮筋腫と⼦宮内膜症治療薬の「マイフェンブリー」(レルゴリクス配合剤)、過活動ぼうこう治療薬の「ジェムテサ」(ビベグロン)は欧米で順次発売して売上高を伸ばしており、野村博社長は「今のところロイバントとの提携の成果は出ていると思う。この3製品が今後の売上高を支えていく」と口にする。

 ただし、度重なる下方修正の要因が、3製品の成長の遅れにあるのは確かだ。ロイバントとの提携発表時に野村社長はレルゴリクスとビベグロンがともに「ブロックバスター(年間売上高が10億ドルを超える大型薬)」になり得ると期待を寄せていたが、21年度の売上高は3製品合計で約177億円にとどまった。22年度第1四半期は3製品合計で96億円と着実に成長してはいるものの、2023年度に想定されるラツーダの売上高減少を完全に穴埋めするのは難しいだろう。

 では、3製品以外に期待できる新製品はあるのだろうか。同社の今後の新薬発売目標を見ると、22年度は米国でのマイフェンブリーの子宮内膜症への効能拡大のみで、23年度はなしと、当面は厳しい状況が続く。

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