
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を契機に成長したスタートアップとして真っ先に名前が挙がるのは、メッセンジャー(m)RNAワクチンの開発に成功した米モデルナと、ドイツのビオンテックだろう。2021年12月期の売上高はともに2兆円を超え、22年上半期もモデルナが108億ドル(約1兆4780億円)、ビオンテックが96億ユーロ(約1兆3200億円)と、1兆円を超える売上高となった。
これに続くのが、米国のバイオテクノロジー企業ノババックス。米ファイザー、米モデルナ、英アストラゼネカに続く国内で4製品目のCOVID-19ワクチンとして、22年4月に薬事承認を取得した「ヌバキソビッド(地域によってはコボバックス)」を開発した会社だ。日本では武田薬品工業に国内で製造・販売する権利が与えられている。8月中旬にノババックスのシニアバイスプレジデントであるシルヴィア・テイラー氏にインタビューする機会があった。

ノババックスは1987年に設立された歴史あるワクチン企業だ。遺伝子組み換え技術により工業的に生産した抗原たんぱく質と、免疫を強化するための添加剤であるアジュバントとを組み合わせたワクチンに焦点を当て、米国政府機関などの資金援助を受けながら、新型インフルエンザやエボラ出血熱、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)などに向けたワクチン開発に取り組んできた。しかし、コロナ禍以前に承認取得に至った製品はなかった。
2020年初めにCOVID-19のパンデミックが発生するとすぐにワクチン開発に着手。5月には官民連携パートナーシップである感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)の支援を受けて臨床試験を開始した。テイラー氏は「通常ワクチン開発には8年から10年はかかるといわれているが、2年で開発できたのは画期的。特に初期の臨床試験が可能になったのは、CEPIの支援によるところが大きい。パンデミックのような事態に対してこうした団体から資金提供がなされることは重要だし、それなしでは開発を進められなかった」と振り返る。
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