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(写真:PIXTA)

 テレワークの阻害要因としてやり玉に挙がる印鑑だが、医療の現場でもやはり押印が問題となっている。

 医師は患者に処方箋を渡す際に、そして薬剤師は調剤した際に、処方箋に記名押印または署名しなければならないと、医師法の施行規則と薬剤師法に定められているのだ。

ファクス後、原本を郵送する必要

 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って、初診時からオンライン診療を行うことが可能になり、薬剤師はオンライン服薬指導を行えるようになった。ただし、その場合も医療機関では処方箋を紙に印刷して押印し、薬局にファクスなどで送った後、原本を薬局に郵送する必要がある。

 薬局経営者からは、「医療機関と電子データを直接やりとりができた方が効率的だし、入力ミスもなくなるのに」といった声が上がる。

 こうした状況を変えようという動きはある。今年7月に閣議決定した骨太の方針2020には、「2022年夏をめどに電子処方箋の運用を開始する」と盛り込まれた。ただそれでもきちんと普及する仕組みができるのか疑問視する声もある。

 上に「記名押印または署名しなければならない」と書いたが、実は厚生労働省は2016年3月に「電子処方せんの運用ガイドライン」を策定し、電子処方箋は形式的には解禁されてはいる。しかし、そのガイドラインに定める内容があまりにも非現実的であるため、普及してこなかった。

 患者が電子処方箋を希望した場合でも、医療機関で紙に印刷した「電子処方箋引換証」を受け取り、薬局で提出する必要があったからだ。つまり患者にとっては処方箋をやりとりするのと何ら変わらなかった。

コストがかかるだけでなく運用も煩雑

 さすがにこの運用は問題視する声が多く、今年4月に改定されたガイドラインの第2版では引換証の発行は不要になった。それでも現状のガイドラインのままでは、電子処方箋の普及は難しいと見る向きは多い。

 電子処方箋をやりとりする際に医師や薬剤師は電子署名を行わなければならないが、厚労省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」では、保健医療福祉分野PKI(HPKI)認証局の電子署名を施すことが推奨されている。HPKIとは、医師、薬剤師、看護師などの保健医療福祉分野の国家資格などを認証できる電子証明書のことだ。

 ところがこのHPKI方式の電子署名はハードルが高い。