山中伸弥氏が所長を務める京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と武田薬品工業は2015年4月、包括的共同研究契約を締結。10年間で200億円を投じるT-CiRAという名称の共同研究をスタートさせた。

2015年、提携を発表した記者会見後に握手する京都大の山中伸弥教授(右)と武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長(写真:共同通信)
2015年、提携を発表した記者会見後に握手する京都大の山中伸弥教授(右)と武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長(写真:共同通信)

 提携から約6年が経過した21年8月10日、武田薬品などが会見を開き、T-CiRA発のスタートアップの設立を発表した。新会社の名称はオリヅルセラピューティクス。社長には外資製薬会社で研究開発などの経験がある医師の野中健史氏が就任した。T-CiRAから移管を受けたiPS細胞由来の再生医療の事業化を目指すという。

 T-CiRAではこれまでに、ヒトのiPS細胞を使った10程度のプロジェクトが進められてきた。そのうち、iPS細胞を基に作製した免疫細胞であるT細胞を用いたがんの免疫療法のプロジェクトについては武田薬品が開発を決定し、現在臨床試験の実施に向けて製造工程の確立に取り組んでいるところだ。筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病の患者の細胞からiPS細胞を作製し、それを神経細胞にして病態を再現し治療薬の候補を探した。現在は見いだした候補品を、武田薬品で臨床試験に向けて改良する作業を進めているという。

 ただし、武田薬品は16年に糖尿病などの代謝性疾患と循環器系疾患の創薬をやめ、がん、消化器系疾患、中枢神経系疾患の3領域とワクチンに集約する方針を打ち出した。19年1月のアイルランドのシャイアー買収により、希少疾患などが重点領域に加わったが、絞り込みの方針自体は変わっていない。

 そこで、T-CiRAが進めてきたプロジェクトのうち、武田薬品が重点領域と位置付けていないものを、外部資金を活用して事業化を目指そうと設立されたのがオリヅルだ。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1159文字 / 全文1888文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「橋本宗明が医薬・医療の先を読む」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。