協和キリンは8月3日、2021年12月期第2四半期の決算を発表した。21年1~6月(上期)の売上収益は前年同期より5%増えて1650億円となったが、コア営業利益は同10%減の309億円、四半期利益は同10%減の251億円だった。21年2月に発表した中期経営計画では、25年までの年平均売上収益成長率(CAGR)を10%以上、25年のコア営業利益率を25%以上にする目標を掲げていた。5%の増収かつ減益でのスタートになった。

 コア営業利益の減少は、販売費および一般管理費が同15%、金額では90億円増えたことと、研究開発費が同10%、金額では24億円増えたことが主因。だが、通期の予想に比べると上期の段階で売上収益は47%、販管費48%、研究開発費41%、コア営業利益48%、四半期利益50%という数字で、通期予想は変更していない。

 販管費の増加は、グローバル製品の1つである骨疾患の治療薬「クリースビータ」(ブロスマブ)に関して、共同開発・販売を行っている米ウルトラジェニクス・ファーマシューティカルに対する北米でのプロフィットシェア費用の影響が大きい。また、グローバル対応のための人件費やIT投資などが増えたことなど、いずれもグローバル基盤の確立に向けて投資が先行している状況といえる。

 売上収益の増加は、クリースビータと、抗がん薬の「ポテリジオ」(モガムリズマブ)、パーキンソン病治療薬の「ノウリアスト」(イストラデフィリン)というグローバル3製品によるところが大きい。日本での売上収益は薬価改定や、共同販売を終了した品目が複数あった影響などで前年同期より6.6%減少したが、北米、欧州、アジア・オセアニアなど海外での売上収益が伸び、日本のシェアは前年同期の52%から46%へと減少している。

 北米ではクリースビータとノウリアストが好調で、売上収益は前年同期よりも70億円増えた。ポテリジオは新型コロナウイルスの影響で第1四半期は前年並みの売上収益だったが、第2四半期は市場回復の兆しが見られたという。欧州でもコロナの影響でポテリジオの薬価交渉などに時間がかかっているが、クリースビータとも増収となった。ただ、ノウリアストに関しては7月に欧州で、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品評価委員会(CHMP)が、「ウェアリングオフ現象を有する成人パーキンソン病患者におけるレボドパ含有製剤との併用療法」という適応症での承認に否定的な見解を示した。まだ承認の可能性を追求していくとのことだが、グローバル戦略への影響が注目される。

 中計の進捗状況などを宮本昌志社長に聞いた。

中期経営計画を発表して初の半期決算が減益となった。

宮本昌志社長:第2四半期決算は全体で見るとほぼ計画通りだと思っている。中計を出してまだ半年しかたっておらず、計画から大きくずれてはいない。通期予想に対する進捗率で見るとほぼ想定通りだ。50%には達していないが、伸びている途中なので後半のほうが大きくなると考えている。

 ただもちろん、製品別に見るとでこぼこがあって、進捗率が少し悪いものもある。そういうところは「いつまでもCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)のせいにするな」と発破をかけている。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1607文字 / 全文2941文字

【春割/2カ月無料】お申し込みで

人気コラム、特集記事…すべて読み放題

ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「橋本宗明が医薬・医療の先を読む」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。