アイルランドのシャイアーの買収により、グローバルメガファーマの規模に肩を並べた武田薬品工業。次の課題はその規模を維持できるだけの新製品をコンスタントに出していけるかどうかだ。2024年度までの承認取得を目指す候補品の中で、最も大型化が期待される品目は、神奈川県藤沢市の湘南研究所が生み出した。なかなかグローバル品目を生み出せず、2010年代後半には従業員を半減するほどのし烈なリストラに遭った研究所で、どのようにして種を育んできたのか。

 6月29日に大阪市内で開いた武田薬品工業の定時株主総会。クリストフ・ウェバー社長は「2021年度は転換点だ」と繰り返し、開発中の候補品リストであるパイプラインが充実してきたことを盛んにアピールした。

 湘南研究所(神奈川県藤沢市)が創出した、中枢神経系疾患の2つの候補品にとりわけ自信を深めているようだ。「15年から取り組んできた研究開発組織の変革の努力の成果だ」とウェバー社長は胸を張った。組織改革の指揮を執った研究開発トップのアンドリュー・プランプ取締役も「オレキシンフランチャイズ」と称している中枢神経系の候補品について「非常にエキサイトしている」と期待を隠さなかった。

 オレキシンフランチャイズとは睡眠に関わるオレキシン受容体を標的としたTAK-925、TAK-994、TAK-861などの候補品群のことだ。それぞれ特徴があり、過度な眠気など様々な症状の睡眠障害を対象に開発している。まずはTAK-994で、「居眠り病」とも称されるナルコレプシー1型(NT1)の治療薬として24年度に承認取得を目指す。

 武田薬品は、NT1だけでピーク時に30億ドル(約3300億円)から40億ドル、ナルコレプシー2型(NT2)やその他の睡眠障害を含めると最大60億ドルのポテンシャルがあるとみている。24年度までに承認取得を見込む品目の中では、最も大型の薬になりそうだ。

 湘南研は大阪市とつくば市にあった研究所を統合して11年に発足した。旧湘南工場跡地に約1500億円を投じて建設した施設は、延べ床面積約31万㎡の威容を誇る。湘南研をオープンした当時、武田薬品は経営面で苦境に立たされていた。

湘南研は大阪市とつくば市にあった研究所を統合して11年に発足した。現在は「湘南ヘルスイノベーションパーク」に衣替えし、ベンチャーや他の製薬企業の研究部門などが入居。湘南研も入居者の1つだ
湘南研は大阪市とつくば市にあった研究所を統合して11年に発足した。現在は「湘南ヘルスイノベーションパーク」に衣替えし、ベンチャーや他の製薬企業の研究部門などが入居。湘南研も入居者の1つだ

 武田薬品は1990年代に4つの自社創製品を世界で販売して業績を拡大したが、相次いで特許切れを迎えつつあった。営業利益は2006年度の4500億円超をピークに減少傾向で、14年度には営業赤字に転落した。苦戦の原因は研究開発が振るわず、グローバル品目をほとんど生み出せなかったことだ。

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