米大手製薬であるメルクの日本法人のMSDは7月27日、「近年の薬価制度改革における制度上の課題について」と題する記者会見を開催した。

 日本の薬価制度に対しては、日本製薬工業協会や、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA Japan)などの業界団体が提言などを行うことが多く、個別の企業がもの申すことはほとんどなかった。それが、日本における個別の医薬品の販売額のデータを示してまでメディアに訴えたのは、よほど腹に据えかねる状況だからだろう。

MSDの記者会見
MSDの記者会見

 メルクは2020年に世界で479億9400万ドル(約5兆2700億円)を売り上げたグローバルメガファーマだ。同社のトップ製品は免疫チェックポイント阻害薬の「キイトルーダ」。がん細胞が免疫細胞から逃れる仕組みを妨げて、免疫細胞による攻撃を促す。

 キイトルーダの2020年の売上高は143億8000万ドル(約1兆5800億円)で、為替の影響を除くと前年よりも30%売上高を伸ばした。小野薬品工業と米ブリストルマイヤーズスクイブ(BMS)が共同開発した「オプジーボ」の競合品だが、臨床試験で対象となるがんの種類を増やしたことなどが奏功し、2019年に売上高100億ドルを突破して逆転。その後も快進撃を続けている。

 そんな絶好調のキイトルーダだが、日本での景色は異なっているようだ。記者会見では医薬コンサルティング企業IQVIAジャパンが調査したキイトルーダの四半期ごとの市場での販売額のデータが示されたが、それによると2019年第3四半期の350億円超をピークに2020年第2四半期には300億円を割り込むまで減少。その後も300億円前後で推移している。

販売額が増えると薬価を引き下げる

 日本での売上高が減少しているのは、薬価制度により、薬価を度々引き下げられているからだ。

 日本の薬価制度には、当初の薬価設定時の予想を大きく上回って販売額が増えると薬価を引き下げるというユニークな仕組みがある。「市場拡大再算定」「特例拡大再算定」と呼ばれるもので、年間販売額が1000億円超かつ予想の1.5 倍以上になると最大25%引き下げ、さらに1500億円超かつ予想の1.3倍以上になると最大50%引き下げるなどのルールが定められている。

 制度導入時から業界は強く反発していたが、「現状のままでは保険財政が破綻する」といった“薬剤費亡国論”がまかり通って導入された経緯がある。引き下げのタイミングも2年に1回だったのが、2018年度からは年4回に増加した。

続きを読む 2/3 「道連れ再算定」に反発

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