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 楽天メディカルジャパン(東京・世田谷、虎石貴社長)が、光免疫療法に用いる新しいタイプの抗がん剤ASP-1929を2020年3月に、日本で製造販売承認申請していたことを発表した。適応は再発頭頸部がんだ。同社は、楽天の三木谷浩史会長兼社長が会長兼CEO(最高経営責任者)を務める楽天メディカル(米カリフォルニア州)の日本法人である。

楽天メディカルの事業戦略説明会に出席した楽天の三木谷浩史会長兼社長(中央)

 ASP-1929は、がんに多く見られる上皮成長因子受容体(EGFR)というたんぱく質に結合するセツキシマブという抗体医薬に、IR700という色素を結合した医薬品だ。

 ASP-1929の抗体部分ががん組織にあるEGFRに結合したところで、690nmの波長の光を当てると、IR700が毒性を発揮してがん細胞を殺す。その際に、がん細胞から漏れ出した成分により免疫も増強するので、長期間抗腫瘍効果を発揮すると考えられるという。

 楽天メディカルジャパンは光を照射するレーザー照射用の医療機器についても、3月に製造販売承認申請している。光感受性物質を特定の細胞に選択的に運び、光の照射により細胞を壊死(えし)させる治療技術を同社は「イルミノックス」と称している。

国際共同治験を実施、目標患者数は275例

 会長兼CEOの三木谷氏はテレビ電話での取材に対して、「最初の一歩を踏み出せたにすぎないが、日本の医療ベンチャーでここまで到達したところは多くない。まだ承認されたわけではないが、承認申請を受理していただけたという意味では大きな一歩を踏み出せたと思っている」と胸を張った。

 実は楽天メディカルは現在、米国や日本、台湾、ベルギーなどで、2種類以上の治療を受けても効果がなかった再発頭頸部がんの患者を対象に、国際共同治験を実施している。目標の患者数は275例だ。

 この試験はASP-1929の治療を受ける患者と、既存の標準治療のみの患者を無作為に決めて、両者のデータを比較する「ランダム化比較試験」として実施されている。米国立衛生研究所(NIH)の臨床試験データベースでは、この試験は2021年12月の終了予定だ。しかし今回はこの比較試験のデータは用いず、これまでに米国と日本で実施した早期の臨床試験のデータを基に承認申請した。

「医薬品条件付き早期承認制度」を活用

 申請は、厚生労働省の「医薬品条件付き早期承認制度」を活用して行われた。医薬品の開発において、有効な治療法が乏しく患者数が少ない疾患に対して一定規模の比較試験で有効性を証明するよう求めていては、開発に長時間を要してしまう。そこで、早期の臨床試験などで一定の有効性と安全性を確認できたら、承認後に有効性・安全性を再確認する調査の実施など、条件を付けて、早期に実用化していこうという制度だ。