塩野義製薬が開発した新型コロナウイルスを対象にした経口治療薬「ゾコーバ錠」
塩野義製薬が開発した新型コロナウイルスを対象にした経口治療薬「ゾコーバ錠」

 国産初の新型コロナウイルスに対する経口薬として承認されるかが注目された塩野義製薬の抗ウイルス薬「ゾコーバ錠」。塩野義は緊急承認制度を利用して申請した。厚生労働省は6月22日に専門部会で審議を行ったが、結論は持ち越しとなり、承認可否は先送りされた。新薬承認の行方はマーケットの関心も高く、翌23日には塩野義の株価は一時10%以上下落する場面もあった。

 今回の舞台となった厚労省の専門部会は医薬品第二部会だ。同部会は2020年にも富士フイルム富山化学が申請した抗ウイルス薬の「アビガン」のCOVID-19への承認可否を審議、「継続審議」の判断を下している。また、医薬品第一部会では、21年12月にエーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬「アデュヘルム」を継続審議とした。ただ、これらは「現時点の臨床試験のデータから有効性などを判断するのは難しい」として、臨床試験データが再提出されれば再度審議するという内容だった。

 ゾコーバの扱い方は過去の専門部会の判断とは異なる。今回の塩野義の申請は緊急承認制度に基づくもので、同制度は5月施行の改正医薬品医療機器法(薬機法)で導入された。従来の新薬とは承認審査の考え方が少し違っている。緊急承認制度は臨床試験の最終結果が出る前であっても、幾つかの要件を満たし、臨床試験で「有効性が推定」され、「安全性が確認」できれば承認される。

 

 塩野義の申請は、「第2相」と呼ばれる段階の臨床試験のデータを使ったものだ。臨床試験の最終段階となる「第3相」と呼ばれる検証的な臨床試験の結果が出る前に申請した格好だが、この第2相の結果をどう判断するかが難しかった。

 ウイルス量を減らす抗ウイルス効果の確認はできた。症状の改善効果についても傾向は見られたものの、当初に設定した基準を満たさなかったのだ。第2相の試験を実施した当初はデルタ型のウイルスが流行の中心だったが、後に症状が出にくいオミクロン型が主流になったことが、症状の改善に関する基準を満たせなかった一因と見られる。

 いずれにせよ、専門部会では意見が割れて結論に至らなかった。変異するウイルスに有効な薬を開発する難しさが現れた形だ。

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