東京・渋谷にある内科・小児科などの「みいクリニック代々木」院長の宮田俊男さんはオンライン診療に積極的に取り組んでいる。

 新型コロナウイルスが流行する前からオンライン診療を行っていたが、4月にオンライン診療で初診を行うことも可能になったので、初診のオンライン診療も開始した。今はオンラインで診察しているのは1日5件ぐらいに減ったものの、ピーク時は1日10件から20件はオンライン診療の申し込みがあった。うち、1~2割は初診だったという。

日本でもオンライン診療が広がりつつある(写真:共同通信、写真はイメージ)

 「オンラインでできることには限界があって、腹痛でも緊急性が高いかどうかは触ってみないと分からない。だから、すぐに来られる患者さんしか受け付けないようにしているが、『初診をオンラインでやってくれるところがない』と、遠方から電話がかかってくることもある。初診のオンライン診療をやっているところはそれほど多くなさそうだ」と宮田さんは話す。

 従来、オンライン診療は高血圧や糖尿病、ぜんそくなどの慢性疾患に限られ、6カ月以上の対面診療を行い、緊急時に30分以内に診療できる患者にしか実施できなかった。診療報酬も対面診療に比べると大幅に低かったため、少しずつしか普及していなかった。

 2020年度の診療報酬改定でも、当初は頭痛を追加して、対面診療の期間を3カ月以上とするなど、少しの規制緩和にとどまるはずだった。だが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、厚生労働省は4月10日にオンライン診療を時限的に大幅に規制緩和する通知を出した。

 これにより、一度も受診したことがない患者に対して、どういう疾患であってもオンラインで診療ができるようになった。診療後、患者が望んだ薬局に処方箋をFAXすると、薬局ではオンラインで服薬指導を行い、処方薬を患者宅に郵送する。これで患者は家に居ながらにして、医師の診察を受けて薬を受け取れるようになった。

オンライン診療システム事業者の競争も激化

 規制緩和によって、オンライン診療を行う医療機関は急増している。「curon(クロン)」というオンライン診療向けのシステムを提供しているMICIN(マイシン、東京・千代田)の原聖吾代表取締役は、「2月には1700件ぐらいだったサービス提供先の医療機関が、4月には倍に増えて3500件になった」と話す。

オンライン診療向けのシステム「curon(クロン)」を提供しているMICIN(マイシン)の原聖吾代表取締役
 

 「YaDoc(ヤードック)」というオンライン診療向けのシステムを提供しているインテグリティ・ヘルスケア(東京・中央)の武藤真祐代表取締役会長は、YaDocを使って行われたオンライン診療の件数が、2月に比べて5月は6倍から10倍ぐらいで推移していると言う。

オンライン診療向けのシステム「YaDoc(ヤードック)」を提供しているインテグリティ・ヘルスケアの武藤真祐代表取締役会長

 また、「CLINICS(クリニクス)」というシステムを提供するメドレーの豊田剛一郎代表取締役も、「当社のシステムを新規に導入する医療機関は、2月に比べて4月は約10倍あった」と話している。ちなみに、ここに挙げた3社は日本のオンライン診療の“御三家”と呼ばれる存在で、3人の経営者はいずれも医師だ。

「CLINICS(クリニクス)」というシステムを提供するメドレーの豊田剛一郎代表取締役

 実は4月10日の通知で規制緩和したのは、パソコンやスマートフォンなどのビデオ通話機能を利用して、“目で見て行う”オンライン診療だけでなく、電話診療も同様に初診から疾患の制限なく行えるようになった。診療報酬上の扱いも同じだ。

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