製薬企業は、治療薬やワクチンなどの研究開発の担い手となる一方、医療に必要な医薬品の供給者としての責任を負っている。研究開発型の製薬企業の業界団体である日本製薬工業協会(製薬協)は、新型コロナウイルスの感染拡大の経験を経て、6月にも政府に政策提言を行う方針だという。ポストコロナ時代に何を求めるのか。製薬協の中山讓治会長にインタビューした(インタビューは5月22日に実施)。

<span class="fontBold">日本製薬工業協会会長 中山讓治氏</span><br> 1950年生まれ。2018年5月から現職。1976年大阪大学基礎工学部大学院(生物工学科)修了。79年3月米ノースウエスタン大学大学院(MBA)修了。同4月にサントリーに入社し2000年3月同社取締役。02年12月第一サントリーファーマ取締役社長、03年6月第一製薬取締役、07年4月第一三共執行役員欧米管理部長、09年4月同社常務執行役員海外管理部長、10年4月同社副社長執行役員日本カンパニープレジデント、10年6月同社社長兼CEO。17年4月同社会長兼CEO。19年6月同社会長(写真:山下裕之)
日本製薬工業協会会長 中山讓治氏
1950年生まれ。2018年5月から現職。1976年大阪大学基礎工学部大学院(生物工学科)修了。79年3月米ノースウエスタン大学大学院(MBA)修了。同4月にサントリーに入社し2000年3月同社取締役。02年12月第一サントリーファーマ取締役社長、03年6月第一製薬取締役、07年4月第一三共執行役員欧米管理部長、09年4月同社常務執行役員海外管理部長、10年4月同社副社長執行役員日本カンパニープレジデント、10年6月同社社長兼CEO。17年4月同社会長兼CEO。19年6月同社会長(写真:山下裕之)

日本製薬工業協会の会長の任期は2年でしたが、1年延長されました。

中山氏:新型コロナとは関係ありません。これまで2年に一度行われてきた薬価改定が、2021年度から中間年にも実施が予定されているという大事な時期で、かつ理事長も交代したので、会長は変えない方がいいだろうというのが皆さんの判断でした。それで引き受けることにしました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による緊急事態宣言の解除が見えてきましたが、ウイルスが消えてなくなるわけではありません。その中で、働き方や企業の在り方も変わらざるを得ない部分があると言われています。

中山氏:デジタルトランスフォーメーションは進むでしょうね。これは日本はどちらかというと遅れていたので、いい機会になります。逆にこれをチャンスと捉えて積極的にデジタル化を進めるべきです。ハンコとか、デジタル化の障害になっているものを見直すべきです。

 もっと根本的には個人の自由と規制の問題を考え直すべきです。例えば(マイナンバーという)国民のID(個人番号)に関して、給付金や支援金が動かないという事態が生じました。国が効率化していくためにも、こういうことをしっかりとやり直していくチャンスだと思います。

今、製薬企業に対しては、ワクチンや治療薬を早期に作り出すことが求められています。

中山氏:そうですね。ただ臨床試験に必要な時間を、簡単に短縮はできません。

 物理学とライフサイエンスには大きな違いがあります。物理学はすごく進展していて、理屈通りのことが起きますが、ライフサイエンスはまだまだ未熟で、理論と実際に起きることが一致しません。まだまだ探索レベルの科学なので、最後は臨床試験が必要になります。

 臨床試験で確認するのは、安全性と有効性です。臨床試験のスピードを速くすることはできますが、拙速はいけません。社会ニーズがあるからと、可能性のある既存薬を早く承認しようというプレッシャーがあったとしても、ここは厳格にサイエンスに基づいてやらなければ大きな禍根を残します。

 我々製薬企業は過去に薬害の問題を背負っていますから、これは徹底して科学的に客観的にやるべきだと思っています。

今回、治療薬の開発を加速するために、厚生労働省は幾つかの条件の下、臨床試験の資料は後出しでいいという通知を出しました。それに対して、製薬協としても何か意見を出す考えがあるのですか。

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