また、ちとせ研究所(川崎市、藤田朋宏CEO)は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が支援するプロジェクトなどに参画して藻類培養技術を培ってきた。現在はNEDOの委託事業に採択されて、マレーシア・サラワク州の州立研究機関であるサラワク生物多様性センターと共同で5haの大規模培養設備を建設しているところだ。

マレーシアのサラワク生物多様性センターに設置された1000平方メートル規模の藻の培養設備
マレーシアのサラワク生物多様性センターに設置された1000平方メートル規模の藻の培養設備

藻類産業のエコシステムを

 プロジェクト参加企業の声を聞くと、「カーボンニュートラルの実現に向けて可能性を探る」と、情報収集を目的に参加したところが多い。しかし、中には興和(名古屋市)のように「協力関係にあるインド企業とインドで藻類の培養事業を実現したいと考えており、(培養技術を持つ)ちとせグループの支援に期待している」と、具体的に事業化を口にするところもあった。

 DICや富士化学工業(富山県上市町)のように、既に藻類を天然着色料や機能性食品素材として事業化することに成功している企業も参加している。DIC新事業統括本部マネージャーの太郎田博之氏は、「これまでも国のプロジェクトなどに参加して事業化に取り組んできたが、産業を創出するとなると1社ではできない。藻類産業のエコシステムができることを期待している」と語った。

 つまりMATSURIプロジェクトは、単に藻類の用途を研究開発して藻類ビジネスの可能性を見いだそうというものではない。石油を精製して航空用のナフサ(粗製ガソリン)やガソリン、軽油などの燃料のほか、汎用樹脂、機能性樹脂、食品・化粧品・医薬品原料などの連産品を生みだして、石油化学産業を発展させてきたように、藻類を様々な用途で利用できるようにして、藻類産業を本格的に立ち上げようと狙っているのだ。

 藤田CEOはこのように説明する。「日本の原油の供給量を藻類で満たそうとすれば、北海道と本州と九州を合わせたぐらいの面積が必要になる。もちろん、日本国内でそれほどの土地を確保できないが、藻類を化石燃料に置き換えるプロジェクトとしては、最終的にはそれぐらいの規模が必要になる」