「製薬企業の中でも感染症領域を強みとしていながら、COVID-19向けの治療薬やワクチンの実用化では貢献できていないことにじくじたる思いがあった。今年度は資源をCOVID-19に集中投下して早期終息に貢献する会社となりたい」。塩野義製薬の手代木功社長は、2020年度の決算説明会で、このように口にした。

塩野義製薬・手代木功社長(写真:加藤 康)

 4月に米ファイザーとドイツのビオンテックが開発したワクチンの高齢者向けの接種が始まった日本。菅義偉首相が訪米中に実施した米製薬会社ファイザーの最高経営責任者(CEO)との電話協議を踏まえ、9月末までに同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)向けワクチンの日本への追加供給も決まった。さらに、英アストラゼネカも米モデルナもそれぞれ日本でワクチンの承認申請をしており、輸入ワクチンにより国内供給量は確保されつつある。

 問題は、国産ワクチンの実用化がいっこうに見えてこないことだ。ワクチンの実用化のためには、数万人規模の「第3相臨床試験」を行い、プラセボ(偽薬)や対照ワクチンとの比較により有効性を確認することが求められる。ところが、人口当たりの感染者数が少ない日本では第3相臨床試験を実施するのが難しく、そのことが国産ワクチン実用化に向けた大きな壁になっている。

承認制度の弾力的運用へ

 ただ、こうした壁の存在に対して、政府の姿勢も変わりつつあるようだ。手代木社長は説明会で、「政治も厚生労働省も柔軟に考えてくれるようになってきた。承認制度の弾力的運用の話ができるようになっている」と明かし、条件付きの承認制度を利用して、大規模な第3相臨床試験の実施と並行して使用を可能にするよう、規制当局と話し合いたい考えを披露した。

 ちなみに、この第3相臨床試験は感染者数が多い外国も含めたグローバル試験として実施することを想定しているという。現在、国内で実施している第1/2相の臨床試験で安全性などに関するデータを取得した後、グローバルで行う大規模な比較試験で有効性と安全性の検証を進めながら、一定のめどがついたところで米国の緊急使用許可のような形で国内での使用を可能にするという考えだ。「条件次第では、年内の国内供給も可能だろう」と手代木社長は語った。

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