第一三共は4月27日、2020年3月期の決算を発表した。売上収益が前年同期比5.6%増の9818億円、営業利益は同65.8%増の1388億円と増収増益を達成した。
しかし、2021年3月期は一転して、売上収益が同1.2%減の9700億円、営業利益が同42.4%減の800億円の予想。このため業績を発表すると株価は一時、5%程度下落した。ただし、減益の要因は今年発売した抗がん剤の販促体制の整備や、抗がん剤関連の研究開発費が膨らむため。がんを強みとする会社へと転換を急ぐ。

第一三共で目下、最も注目されているのは19年12月に米国で、20年3月に日本で、他の薬で治らなかった乳がんに対して承認を取得した「エンハーツ」の動向だ。抗体薬物複合体(ADC)と呼ばれるタイプの新しい抗がん剤で、決算説明会でも証券アナリストなどからの質問は、エンハーツに関するものが多かった。
エンハーツが日米で承認を取得したのは、HER2というたんぱく質がある乳がん患者で、既存の抗HER2治療薬による治療を受けても治らなかった人だ。米国では1月に発売して3月までに32億円を売り上げた。今期は270億円の売上高を見込み、「患者への処方は順調に進んでいる」と眞鍋淳社長兼CEOは胸を張る。日本での発売はこれからだが、今期15億円の売上高を見込む。
研究、開発、製造、営業の全部門を作り替え
エンハーツは売上高以外にも既に収益に貢献している。19年3月にアストラゼネカと、日本を除く全世界の開発と販売で提携し、契約一時金1490億円を受け取った。この分として前期、今期とも98億円ずつを収益として計上する。また、乳がんの承認を取得したことに伴って、アストラゼネカからは137億円の開発マイルストンを受領しており、この分としては前期、今期に9億円ずつを計上する。
現在、まだ他の薬での治療を受けていない乳がん患者や、胃がん、大腸がん、肺がんにも使えるように臨床試験を進めており、適応が増えるに連れて売上高と開発マイルストンは増えていく見通しだ。
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