2022年4月15日、国際科学技術財団が授与する日本国際賞の受賞者らの会見が行われた。22年の日本国際賞の受賞者は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)向けワクチンの開発に貢献したドイツのビオンテック上級副社長のカタリン・カリコ氏と米ペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン氏、環境分野の研究者である米スタンフォード大学のクリストファー・フィールド氏の3人。カリコ氏とワイスマン氏は共同で会見に臨み、COVID-19ワクチンに結びついたメッセンジャー(m)RNA研究の経緯や今後の展望などを語った。

ビオンテック上級副社長のカタリン・カリコ氏(左)と米ペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン氏
ビオンテック上級副社長のカタリン・カリコ氏(左)と米ペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン氏

 日本国際賞は、科学技術の進歩のための研究開発活動を奨励することなどを目的に日本政府の構想に対して民間からの寄付を基に設立されたもので、1985年に第1回の授賞がなされた。2022年の受賞者は1月に発表され、4月13日に天皇、皇后両陛下が出席して授賞式を開催。14日にオンラインでの受賞記念講演の収録、15日に受賞者による記者会見が開かれた。

 カリコ氏、ワイスマン氏は、1997年ごろからmRNAを医薬品にすることを目指した共同研究を開始。2005年8月にRNAの一部を改変して過剰な炎症反応が生じない方法を見いだした。この発見が、米ファイザーと独ビオンテック連合、米モデルナの両陣営のmRNAワクチンのベースになっている。

 少し説明すると、ゲノムを構成するDNAは4種類の核酸と呼ばれる物質が二重らせんの数珠状につながっており、その配列に遺伝情報が記録されている。DNAに記録された遺伝情報は、1本鎖のmRNAに写し取られ、その配列を鋳型にたんぱく質がつくられる。このため、DNAやmRNAを人体に直接投与すれば、体内でたんぱく質がつくられて、ワクチンや医薬品として働くというアイデアは古くからあった。1990年代初めには、人工的に合成したmRNAを用いた動物実験が幾つかの研究グループから報告されている。

 しかしながら、mRNAは不安定な物質で、かつ動物に投与すると激しい炎症反応を起こした。このため90年代後半には、DNAはともかくmRNAを医薬品やワクチンにする研究は下火になっていった。

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