新型コロナの高齢者向けワクチン接種が始まったが、英国や米国での接種に比べて出遅れた感は否めない。日本での接種開始が遅れた一因に挙げられるのが、日本政府が各メーカーに対して国内で小規模な臨床試験の実施を求めていることだ。海外で数万人の大規模なデータがあるにもかかわらず、接種開始を数カ月遅らせてまで日本での小規模な臨床試験を行うことに疑問の声を上げる元厚労省職員の津田重城氏に話を聞いた。

厚生労働省で、薬剤師の免許を持つ、いわゆる薬系技官として医薬品の安全性などに関する業務に携わった後、現在は医薬品関連の団体に所属されています。

津田重城氏:薬学部の出身で、1983年に大学院修士課程を修了後に旧厚生省に入省しました。厚労省では、医薬品の審査業務には関わりませんでしたが、医薬品の安全対策や品質管理、国際関係の業務を担当して、2007年に退官しました。その後は、医薬品や医療機器の品質などに関する調査研究などを行う団体に所属し、研修会の企画などを行ってきました。

津田重城氏。旧厚生省に入省後、医薬品の安全対策や品質管理、国際関係の業務を担当した
津田重城氏。旧厚生省に入省後、医薬品の安全対策や品質管理、国際関係の業務を担当した

 そういう立場なので、製薬企業や規制当局などに所属する人と情報交換をする機会が多くあります。高い専門性を持った人たちと議論していると、今の国の政策に疑問を示す人は多いのですが、医薬品の許認可権を持った厚労省に面と向かって反対する声はなかなか表には出てきません。もっとオープンに科学に基づいて議論すべきだし、そういう環境をつくっていくことが重要だと思っています。

新型コロナウイルスのワクチン接種が2月に始まり、4月12日には医療関係者以外の高齢者向けの接種も始まりました。ただ、欧米などに比べてかなり普及が遅れています。一因として、厚労省は海外で大規模な臨床試験を行って緊急使用許可されたワクチンに対しても、国内で追加の臨床試験を行うよう求めていることが挙げられます。この国内での追加臨床試験に対して、津田さんは疑問の声を上げておられます。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2920文字 / 全文3732文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「橋本宗明が医薬・医療の先を読む」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。