ジェネリック業界の経営者にインタビュー。サワイグループホールディングス副会長、沢井製薬社長の澤井健造氏に、品質問題や供給不足問題の背景にある課題を語ってもらった。

小林化工から譲り受けたトラストファーマテック(福井県あわら市)の工場からの出荷が2023年4月に始まり、九州の第二工場も24年度には稼働します。サワイグループホールディングス(GHD)全体の生産能力はこれまでよりも年間50億錠分増えて205億錠になるとのことですが、ジェネリック(後発医薬品)の供給不足はこれで解消に向かうでしょうか。

澤井 健造(さわい・けんぞう)氏
澤井 健造(さわい・けんぞう)氏
1995年4月住友製薬(現住友ファーマ)入社、2001年4月沢井製薬入社、10年6月取締役、13年6月取締役 常務執行役員、17年6月取締役専務執行役員、サワイ・アメリカ取締役社長、アップシャー・スミス・ラボラトリーズ取締役会長、20年6月沢井製薬代表取締役社長(現任)、21年4月サワイグループホールディングス代表取締役副会長(現任)。(写真=山本尚侍)

澤井健造社長(以下、澤井社長):供給不足の問題は、小林化工の問題に加えて、日医工の出荷停止の影響が大きいですね。市場シェアが高い会社だったので、出荷停止によって量が足りなくなった。それを、東和薬品もそうでしょうが、沢井製薬も在庫を取り崩しながらなんとかカバーしようとやってきた。

 すると注文がこちらに偏ってくるので、東和や沢井も足りなくなって限定出荷せざるを得なくなる。21年10月ごろに沢井製薬は470品目ぐらいを限定出荷にしていました。約800品目のうち470品目だから、半分以上ですよ。出荷を制限しながら少しずつ在庫を確保して、22年の4月ぐらいから、制限を解除してきた。

 沢井としても、従業員の方に無理をお願いしたり、製造を効率化できるよういろいろ工夫したり、小さな設備機器を新しく入れたりしながら生産数量を増やしてきました。トラストファーマテックや九州の新工場での中長期的な生産能力拡大につなげていこうと取り組んできたわけです。シェアを考えると影響は大きいので、沢井が限定出荷を解除すれば、他の会社も安心して解除してくれるかなという思いでやってきたのですが、実際にはなかなかそうならなかった。

 最近思うのは、ある品目で限定出荷を解除すると、他社は別のものをつくるためにその品目をむしろ減らすような動きに出る。それでどういうことが起こっているかというと、足りるものは足りているけれど、足りないものはいつまでたっても足りない。それがどういうものかというと不採算品目ですよ。

 最初の頃は、足りないので増産しろということだったのですが、増産しているけれど市場からはまだまだ足りないと聞こえてくる。何でそんなことになっているのか。

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