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 トランプ米大統領は4月3日、米国で感染症対策などを担当する米疾病予防管理センター(CDC)が、外出時に医療用ではない布製マスクの着用を推奨していると明らかにした。それまでCDCは病人以外がマスクを着用することを勧めておらず、これまでの方針を大きく転換した格好だ。

 トランプ大統領は会見で、「あくまでも任意である」「自らは着用しない」としながらも、CDCのマスクに関する新しい推奨内容を説明した。方針を転換したのは、感染拡大地域に無症状の感染者が多数いると考えられるからだ。CDCは「感染予防」という言葉は一切使っておらず、感染が拡大している地域において、ウイルスに感染している可能性がある人が他人に感染させないために、布製マスクを着用することを推奨している。

4月3日にCDCのホームページでもマスクに関する方針が切り替わった。下の画像が切り替え後

 あえて布製としているのは、不織布でできたマスクは医療機関用に優先的に確保する狙いがあるからだ。CDCの方針変更を巡る議論の中でも、マスクの着用を推奨すると医療機関への供給が困難になることを懸念する声が上がっていた。マスクは全世界的に品薄の状態になっている。このためCDCはホームページ上で、Tシャツを使ったり、バンダナとコーヒーフィルターを使ったりして、マスクを簡単に手作りする方法を図示している。

 さて、布製のマスクといえば安倍晋三首相が4月1日に1世帯当たり2枚ずつ配布することを発表して話題となった代物だ。緊急経済対策で1億枚のマスクを買い上げて、全国5000万世帯を対象に配布すると語った内容に対しては、「あきれた」「あまりにも唐突」「税金の無駄使い」といった批判が噴出。国内外で、「アベノマスク」とやゆする報道も目立つ。

 しかし、安倍首相は同時に、(1)4月には月7億枚を超えるマスクの供給を確保し、(2)全国の医療機関にこれまで1500万枚の医療用マスクを配布し、今週にもさらに1500万枚を配布する、(3)高齢者施設、障害者施設、全国の小学校・中学校向けにも布製マスクを確保し、配布する──などとも述べている。

 政府の中でマスクの調達を担当しているのは経済産業省だ。同省の広報担当者は、「布製マスクは洗って再利用できるというのがポイントだ。マスクの生産量が限られる中で、医療従事者に対するマスクの供給を最優先に確保する必要があり、一般の人には洗って使ってもらえればということだ」と説明する。当初は中国やタイなどからマスクを輸入できていたが、各国がマスクの重要性を認識するようになって輸入が難しくなってきたという事情もあるようだ。

 つまり、安倍首相が布製マスクを全世帯に配布するとしたのは、医療機関向けのマスクを確保するためだ。だが、残念ながら首相の会見でその意図は十分に伝わったといえるだろうか。

 もっとも、「布製マスクは自作できるのだから、お金をかけて国民に配布する意味があるのか」という疑問は残る。また、世界保健機関のホームページでは、依然として「健康な場合は、感染が疑われる人の世話をしている場合のみ、マスクを着用する必要がある」とし、マスクの着用は推奨していない。

 ただ、新型コロナウイルスは感染していても症状が出るまでには時間がかかるし、場合によっては症状が出ない場合もあることは、これまでの経験から分かってきている。自分は何も症状がないと安心しているあなたも、実は体内に新型ウイルスがいる可能性は十分にある。そう考えると、周りの人にうつさないために、外出時だけでなく、オフィスや家庭内にいるときもマスクを着用するというのが、感染拡大を防ぐ観点では正解といえそうだ。