欧米先進国が構築してきた医療・ヘルスケアシステムに、医療費高騰、医療保険財政の悪化といった綻びが見える中で、塩野義は中国平安保険グループとの合弁を通じて、中国・アジア市場における新しい医療・ヘルスケアシステムの構築という社会実験に参加する立場も手に入れた。中国平安保険グループとともに、より効率的な医療・ヘルスケアシステムを構築できれば、アジア、アフリカなど医療インフラが未整備な社会に貢献していける──。3月30日の記者会見の冒頭、「久しぶりにわくわくしている」と語った手代木功社長の胸の内には、そんな深謀遠慮があったに違いない。

3月30日、記者会見する塩野義製薬の手代木功社長
3月30日、記者会見する塩野義製薬の手代木功社長

 もっとも、新会社で具体的にどのような事業を行っていくかについては、7月に改めて説明するとのことだ。手代木社長が「超長期的な戦略的提携」と語るこの枠組みがどんな方向に発展していくのかに注目していきたい。

 以下、手代木社長とのQ&Aを紹介する。

今回の提携の経緯は。

 医療現場で生じるリアルワールドデータをどうすれば創薬に活用できるかと数年前から考えていた。半年ほど前に(元富士フイルム取締役副社長の)戸田雄三さんから面白い会社があると紹介され、8~9カ月かけて議論を詰めて、これならできると判断した。リアルワールドデータを利用した創薬は日本でも注目されているが、個人情報保護法との関係などを考えると、いつになれば日本の医療情報を利用できるかが見通せない。中国平安保険には生命保険、損害保険の情報と、オンライン診療のユーザーの情報がリンクした形で存在しているので、創薬に活用できる可能性があると思った。

オンライン診療の情報は、質の面で課題がありそうだ。

 その通り。ただし、創薬に利用するにはこういう項目が必要だという要望を我々から出して、オンライン診療のカルテに入れてもらうようにすることが可能だ。創薬向けにこれから改善していく。

合弁は塩野義が51%だが、マジョリティーにこだわったのか。

 むしろ、彼らが創薬はやったことがないので、塩野義にリードしてほしいということでこの比率になった。JV(合弁事業)が成功すれば、塩野義の株価も上がるだろうから、出資させてほしいと平安側から言ってきたので、2%の出資を受け入れた。

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