日本電信電話(NTT)と京都大学の共同出資企業が電子カルテのデータを統合するシステムを開発し、京大、埼玉医大、自治医大などと共同で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診療データを共有する取り組みを開始した。

 今年3月までに数十人の患者の診療データを集めて分析し、診断、治療法などの研究につなげていく計画だ。COVID-19によって、日本の医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)を一気に進展させることができれば、日本発で新しい治療法などを世界に提案していくこともできそうだ。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

 「感染症の治療に限らないが、臨床での治療の内容は医療機関ごとに異なっている。電子カルテなどのデータを標準化して収集し、分析することで日本発のエビデンス(根拠)を発信していくことにつなげられれば」。こう口にするのは埼玉医科大学総合医療センター感染症科・感染制御科の小野大輔助教。感染症専用病棟を有する同センターで、日々COVID-19患者の診療に当たっている。

 小野助教は、国立研究開発法人である日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、京都大学の本庶佑特別教授が代表者となって行っている「COVID-19の重症化を阻止し反復パンデミックを防止する免疫制御治療薬の開発」のプロジェクトに参画。この1月から始まった、複数の医療機関でのCOVID-19患者の電子カルテや検査値などの診療データを、患者の許諾を得た上で匿名化し、統合・分析して活用する研究に携わっている。

 電子カルテや検査値などの臨床データは医療機関ごとに保管されており、電子カルテなどの標準化が進んでいないため、医療機関を超えてデータを集めて分析・活用することは困難だった。だが、がん診療の分野では、遺伝情報(ゲノム)に基づいて治療法を検討するため、全国の医療機関の診療データを⼀元的に集めて分析・活用する試みが始まっている。

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