全2602文字

 三菱ケミカルホールディングス(HD)は2月12日、中長期の事業計画である「KAITEKI Vision30」に関する記者説明会を開催した。気候変動や水資源の汚染、不足、海洋プラスチック汚染、人口増加と高齢化の進展などの社会課題がクローズアップされる中で、2050年に目指すべき社会や企業像を想定し、そこから逆算して2030年に手掛けているべき成長事業を描き出した。今後、これを基に2025年までの中期経営計画を策定する計画だ。脱プラスチックなど、化学企業として直面するリスクをビジネスチャンスに変えられるだろうか。

中長期の事業計画を説明する三菱ケミカルホールディングスの越智仁社長

 三菱ケミカルHDでは、これまで2年かけて社内で議論を重ね、KAITEKI Vision30を作り上げてきたという。現在の社会課題を挙げる一方、温暖化ガス(GHG)がニュートラルで資源循環型の社会を実現し、持続可能な都市、健康寿命を100歳まで謳歌できるなどの2050年の目指すべき社会と企業像を想定した上で、逆算して30年に取り組むべき事業領域として、「GHG低減」「炭素循環」「食糧・水」「デジタル社会基盤」「人快適化」「医療進化」の6つを設定。それぞれの領域での事業化のテーマとして、例えば「GHG低減」では「モビリティー軽量化・電化ソリューション」「低環境負荷化学プロセス」など、「炭素循環」では「バイオプラスチック」や「CO2回収・利活用」、「医療進化」では「再生医療」「予防医療」などをキーワードに挙げている。

 これら6つの事業は18年度には全社売上高(3.9兆円)の約25%だったが、30年には70%超にすることを目指す。これによって、30年度の全社売上高を6兆円にする目標を掲げた。説明会で越智仁社長は「6兆円という数字が独り歩きすると困るが、社会のニーズとリスクを考えながら6つの事業領域に取り組んでいけば、このぐらいはいくのではないかという数字だ」と説明した。

 もっとも、三菱ケミカルHDの足元の業績は芳しくない。2月6日に発表した19年4~12月期決算によると、売上高は2兆7308億円で前年同期より4.9%減少。コア営業利益は1810億円と同31.6%減った。20年3月期通期予想については、売上高を同5.5%減の3兆6300億円、コア営業利益を同33.1%減の2100億円に下方修正した。なお、三菱ケミカルHDは19年8月にPHCホールディングスとの間で連結子会社だったLSIメディエンスの全株式の株式交換を行ったため、同社とその子会社等の事業を非継続事業としており、数字はいずれも非継続事業を除いたものだ。

 同社は高機能ポリマーや情報電子材料などからなる「機能商品」、メチルメタクリレートなどの汎用化学品や石化原料、炭素からなる「ケミカルズ」、子会社で産業ガス最大手の大陽日酸を中心とする「産業ガス」、3月に完全子会社となる田辺三菱製薬や100%子会社の生命科学インスティテュートなどからなる「ヘルスケア」と「その他」の5つのセグメントに分けて決算を開示しているが、19年4~12月期の累計の売上高とコア営業利益が前年同期より増えたのは産業ガスのセグメントのみ。中国を中心とする景気減速などで、ケミカルズはコア営業利益が前年同期より691億円減って387億円となり、機能商品は同89億円減って544億円となった。ヘルスケアでは、田辺三菱製薬が19年2月にスイスの製薬大手ノバルティス社との間で多発性硬化症治療薬「ジレニア」のロイヤルティー収入の支払い義務の存否に関する仲裁が提起されたことなどが影響して、コア営業利益が336億円減って208億円だった。

 20年度を最終年度とする現行の中期経営計画では、20年度に4100億円のコア営業利益を目指しているが、「目標は変更していないが実現は難しい」と越智社長は認める。「米中の貿易摩擦の影響から回復しそうだと思ったら新型コロナウイルスの問題が発生した。今は中国でGDP(国内総生産)の伸びが低下した12年度と雰囲気が似ている」。越智社長はそう語った上で、15年度に社長に着任して以来進めてきた7000億円規模の財務構造改革などを振り返り、「特別な問題がなければ、3500億円ぐらいのコア営業利益を生み出せる体質には改革できたと思う」と語った。