
中外製薬は2月3日、2021年の通期決算と同時に2022年の業績予想を発表した。それによると、売上収益は前年同期よりも15%増加して1兆1500億円と、初めて1兆円の大台に乗る見通しだ。営業利益も4400億円の予想で、実現すれば6期連続で売上収益、営業利益、当期利益が過去最高を更新する。死角はないのだろうか。
2022年の売上収益拡大の最大の要因は、軽症から中等症1の新型コロナウイルス感染症に対して使われる中和抗体薬の「ロナプリーブ」だ。2021年11月には濃厚接触者や無症状の陽性者の発症抑制にも使えるようになった。2021年7月に特例承認されて2021年も774億円の売上収益があったが、2022年には157.1%増の1990億円を見込む。
厚生労働省は、ロナプリーブはオミクロン型に対して有効性が低下するとして、診療の手引きなどで「投与は推奨されない」としている。だが、新たな変異型については有効となる可能性があり、政府などとの交渉状況から、「ある程度の確度があると見込んで」(奥田修代表取締役社長最高経営責任者=CEO)はじき出したのが1990億円という数字だ。
新型コロナ関連では、中等症2から重症患者に使われる抗体医薬の「アクテムラ」も、海外で1444億円、国内で419億円の売上収益を見込んでいる。
アクテムラは2020年に海外で1344億円の売上収益を計上したが、2021年は1028億円に落ち込んだ。それが2022年に前年同期比40.5%も伸びると見ているのは、2020年に中外製薬の親会社でスイス製薬大手のロシュ向けの輸出が販売実績の伸びを上回り、2021年はその調整で輸出が落ち込んだからだ。「ロシュの売上収益の伸びに比べて輸出の余地が残っている」と板垣利明上席執行役員最高財務責任者(CFO)は説明した。
「利益の基調は依然として強い」
いずれにせよ、2022年の予想売上収益のうち、3000億円以上はロナプリーブとアクテムラという新型コロナ関連の医薬品によるものだ。アクテムラは新型コロナが流行する前の2019年に、関節リウマチなどの適応症で、国内で約380億円、海外で約910億円の売上収益があったので、同水準は確保できるだろうが、新型コロナの感染状況や変異型の出現状況次第で売上収益は大きく変動しかねない。
その点について板垣CFOは、「(ロナプリーブやアクテムラの新型コロナ向けなどを除いた)ベースラインの当社の売上収益、利益の基調は2021年に引き続いて2022年も強いし、2023年以降も依然として強いと考えている」と自信たっぷりだ。
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