米国でこのほど迅速承認されたエーザイのアルツハイマー病治療薬「レケンビ」(一般名はレカネマブ)。米国を皮切りに、欧州や日本でも近く実用化されるとみられるが、実際に多くの患者が恩恵にあずかるまでには相当な時間がかかりそうだ。治療の対象となる早期アルツハイマー病患者を簡単に判定する診断・検査技術がまだ確立されていないからだ。ただ、アルツハイマー病治療薬の普及を後押しすべく、医療機器、診断薬メーカーの間では、より簡便な診断・検査方法を開発する動きが加速している。

「治療の対象になる患者は3年後に約10万人と想定している」。レケンビの迅速承認を発表した同日にエーザイが開催したメディア・投資家向けの説明会で、内藤晴夫代表執行役CEO(最高経営責任者)はこう語った。ちなみに、米国では「希少疾患」(レアディジーズ)の定義は患者数20万人未満。レケンビとその競合品を含めた「アルツハイマー病の疾患修飾薬」の市場規模は当面その水準で推移するとみているわけだ。
米国には現在、アルツハイマー病による認知症患者が650万人おり、認知症の前段階の軽度認知障害が1000万人から1400万人と推定されている。軽度認知障害の55%がアルツハイマー病によるものとされていることからすれば、軽度認知障害と軽度認知症を合わせた早期アルツハイマー病患者は少なくとも数百万人はいるはずだ。にもかかわらず治療を受けられるのが年間約10万人としているのは、医師に受診して、脳内への「アミロイドベータ(Aβ)」というたんぱく質の蓄積を判定する検査を行う必要があるからだ。
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