(写真:PIXTA)
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 経済産業省が2030年半ばにガソリン車の新車販売をゼロにする目標設定に向けて動き出した。12月10日、自動車業界関係者を集め議論を始める。

 「ガソリン車が市場から消えるのはサプライチェーンの裾野を含めて影響が大きい」(アナリスト)。ただ自動車メーカーの受け止め方は一様ではない。

 中国は35年をめどに新車販売を電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)など環境対応車のみとするロードマップを掲げる。英国はガソリン車とディーゼル車の販売を30年までに禁止するなど、既に各国で目標が設定されており、各社は対応を急いできた。

 12月7日、水素エネルギー普及を目指し関係企業が立ち上げた「水素バリューチェーン推進協議会」の設立会見で、トヨタ自動車の内山田竹志会長は、「(15年に50年のCO2排出ゼロ目標を掲げ)全社でベクトルをそろえて全方位で対応してきた。生産性の高いHVによって欧州の厳しい規制も余裕を持って対応できている」と自信を示した。

電動化が進んでいない軽自動車

 日産自動車は新型「ノート」で、05年の発売以来続いてきたガソリン車を廃止。エンジンで作った電気のみで走る「e-POWER」搭載車が16年以降の累積販売台数の7割を占めるためだ。ガソリン車比率が比較的高いマツダも「30年には生産するすべての車両を電動化すると18年10月に宣言済み。政府の検討内容にコメントは特にない」としている。市場激変の試練は今に始まったことではないというわけだ。

 一方で日本市場特有の事情として各社が問題視しているのが、国内新車販売の約4割を占める軽自動車の販売が立ち行かなくなりかねないことだ。

 スズキや日産は簡易型のHV技術を搭載した車種も販売するが、「(政府目標で)電動車と見なされるのかが不透明」(日産)。軽自動車を本格的に電動化すれば価格優位性がそがれる。ダイハツ工業は現状、電動化率はほぼゼロ。「安くて良いものを届けるため、今後電動化に対応したい」とし、HVの発売などを検討する。

 「N-BOX」など人気車種を持つホンダにとっても軽の取り扱いが焦点になる。19年度の国内販売では軽以外の乗用車のHV比率は約52%だったが、軽自動車を含む全体では同約25%にとどまる。HVに迫る低燃費を実現してきた日本独自の“エコカー”ともいうべき軽自動車を目標の中でどう位置づけるのか焦眉のテーマとなりそうだ。

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