三菱自動車は12月4日、新型SUV(多目的スポーツ車)「エクリプスクロス」を発売した。2018年のモデルから一新し、新たにプラグインハイブリッド(PHV)のモデルを追加。SUV「アウトランダーPHEV」などで実績のある電動化技術とWRC(世界ラリー選手権)やダカール・ラリーなどで培った走行性能を盛り込み、国内では月間1000台の販売を目指す。

 価格はPHVモデルが384万8900円から、ガソリン車が253万1100円から。10月から予約注文を始めており、既に月販目標の2倍となる2000台を受注した。

三菱自動車の新型 SUV「エクリプスクロス」。PHVモデルを追加した
三菱自動車の新型 SUV「エクリプスクロス」。PHVモデルを追加した

 三菱自動車は20年4~9月期の連結決算で2098億円の最終赤字を計上した。トヨタ自動車やSUBARU(スバル)などが相次ぎ今期の業績見通しを上昇修正したなか、業績不振は続く。「新型コロナウイルスの感染拡大前から、もうからない構造があった」。三菱自動車の加藤隆雄・代表執行役CEO(最高経営責任者)は報道陣向けの説明会でこう述べた。

 今年7月に22年度までの中期経営計画「Small but Beautiful」を策定した三菱自動車。生産能力や車種、固定費を削減する一方で、四輪駆動システムを搭載した新型車や、PHVなどの電動車で攻勢に転じたい考えだ。エクリプスクロスはその中期経営計画を受けた第1弾の新型車。「新しいエクリプスクロスをきっかけに、(業績が)下降傾向にあるものを上昇させていきたい。その意味では重要な役割を担う」(加藤CEO)。

 エクリプスクロスが三菱自動車の反転攻勢に欠かせない存在なのは、コンパクトSUVは国内だけでなく世界でも需要が伸びているからだ。ただその分、競争は激しい。トヨタ自動車の「RAV4」や日産自動車「キックス」、ホンダ「ヴェゼル」など各社も品ぞろえを強化しており、顧客の取り合いとなっている。国内販売で苦戦が続く三菱自動車だが、PHVでは先駆者的な存在。エクリプスクロスでもPHVモデルが他社との違いをアピールする存在となる。

 充電インフラなどが必ずしも十分ではないこともあり、電気自動車(EV)が本格的に普及するまでの電動車の「現実解」ともされるPHV。ただ、数を売るために課題になりそうなのがバッテリーの確保だ。

 トヨタが今年6月に発売したRAV4のPHVモデルは、わずか3週間で国内の受注を停止した。トヨタとパナソニックが4月に新設した車載電池会社、プライムプラネットエナジー・アンド・ソリューションズが製造していたものの、年度内に予定していた生産量の上限に達したためだ。

参考記事:「現実解」のPHVに電池の壁、トヨタRAV4年内打ち止め

 車載電池について、三菱自動車は主にGSユアサと三菱商事、三菱自動車が共同で設立したリチウムエナジージャパン(滋賀県栗東市)からバッテリーを調達してきた。加藤CEOは「アウトランダーでの経験やノウハウもあるため、一気にバッテリーの確保が難しくなることは考えにくい」と説明する。ただ「電動車の期待が高まる中、バッテリーの調達は向き合うべき課題だ。今後、日産、仏ルノーとのアライアンスによる共同調達も考えていく」と述べた。

 日本政府は30年代半ばに国内販売をEVやHVなど電動車に切り替える方針を打ち出す見通しだ。中国や英国、米国カリフォルニア州なども同様のロードマップを表明しており、今後も電動車の開発、バッテリーの確保は企業に加え、各国・地域にとって大きなテーマとなる。

 中国政府は地場の電池メーカーの育成のため、特定の企業の電池が搭載されていることを条件に電動車へ補助金を付けている。この特定メーカーを推薦する「ホワイトリスト」には現在は韓国のLG化学なども含まれているが、リストに入る前には韓国系メーカーのシェアが大幅に低下するなど打撃を受けたとされた。

 欧州では、シェアを伸ばすアジア勢に依存する状況を変えようと、18年に欧州バッテリー同盟(EBA)を設立。域内で電池の開発や製造のサプライチェーンを整備し、電池産業の育成・強化を急いでいる。スウェーデンの新興電池企業ノースボルトに対し、欧州投資銀行を中心に資金面で手厚くサポートするなど、域内での投資活動も活発だ。ノースボルトは独フォルクスワーゲンと合弁でドイツに巨大電池工場を建設する計画を持つ。

 EVやPHVに欠かせないバッテリーの調達や確保は、各国の思惑も絡み政治的な色合いを帯びつつある。三菱自動車も含め、自動車各社が電動車のラインアップを強化するためには、車両の開発だけでなく、電池のサプライチェーンまで見通した戦略が求められそうだ。

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