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 スズキは11月25日、新型コンパクトカー「ソリオ」を発表した。同社のコンパクトカー「スイフト」と並ぶ主力車種で、5年ぶりの全面改良となる。車内の空間が広いのが特徴で、車体のサイズを従来車種より拡張したことで荷室を広げ、小型のスーツケースであれば荷室に5個積むこともできる。

スズキは主力車種「ソリオ」の新型車を12月4日から販売する

 ソリオのような「コンパクトハイトワゴン」と呼ばれる車種は維持費がミニバンなどより安くなることから、中型車からダウンサイズし、乗り換える顧客も少なくない。価格は158万1800円から。ダイハツ工業の「トール」やトヨタ自動車の「ルーミー」などのコンパクトハイトワゴンも販売を伸ばしており、競争が激しくなっている領域の一つだ。

 同日に開いた発表会で、スズキの鈴木俊宏社長は「ソリオを買い求める層は目の肥えた顧客が多い」とし、「ソリオの月販4000台は最低目標。スズキとして年間10万台の登録車販売を目指していきたい」と述べた。

スズキの鈴木俊宏社長は「ソリオの月販4000台は最低目標」と話す

荷室かバッテリーか

 こうした手ごろな価格と広い荷室に特徴があり、支持を得ているからこそ、悩ましいのが電動化への対応だ。従来モデルと違い、今回のソリオにはストロングハイブリッド車(HV)は設けず、より簡易なマイルドHVとガソリン車の2種類にした。「前回の車種の売れ方を考えて、今回はマイルドHVの対応にした」と鈴木社長は言う。

 ストロングHVではバッテリーにためた電気を使うことで、エンジンが停止してもモーターのみで走行できる。トヨタやホンダなど日本勢が得意な分野だ。一方のマイルドHVはバッテリーとモーターで発進時などにエンジンを補助するが、エンジン停止時の走行には使えない。ストロングHVに比べトータルでの燃費削減効果は限られるが、機構がシンプルなこともあり欧州勢を中心に採用が広がっている。

 ストロングHVのシステムを搭載した2016年11月に販売したモデルでは、燃費は1リットル当たり32kmだった。それに対し新型ソリオのマイルドHVは同じ測定方法から計算した場合、1リットル当たり22.4km。ストロングHVを搭載した前回のソリオの方が、燃費性能では大きく上回る。

 ただ従来のソリオのストロングHVでは、積載するバッテリーにより荷室や後席が狭くなるという課題があった。例えば、荷室の床下に収納スペースがあったが、ストロングHVではバッテリーを入れる場所として活用していた。そのため顧客からも「荷室を広くしてほしい」といった声が上がっていたという。商品・原価企画本部四輪商品第一部の名古屋義直アシスタントチーフエンジニアは「小型車はバッテリーの搭載量が限られる。荷室をつぶしてでも搭載するのかといった問題もあり、(バッテリーと小型車の)相性は悪い」と悩みを打ち明ける。

 今後の電動化について、鈴木社長は「ストロングHVをやめたわけではなく、どういう車が合うのか考えないといけない」と説明する。トヨタとの提携関係を生かしてHVの開発を加速させ、電気自動車(EV)を含めた電動化を進める方針だ。ただ、明確な時期は明らかにしていない。

 各国ではEVへの補助金を手厚くする一方、2035年以降に、米カリフォルニア州はガソリン車の販売を禁止し、中国では全て環境対応車にするよう求めている。日本でも菅義偉総理大臣が「50年までに温暖化ガスの排出を全体としてゼロにする」と発言し、車の電動化のペースがさらに速まることが予想される。

 こうした動きに対応すべく、自動車メーカーの戦略も鮮明になっている。

 ボルボ・カー・ジャパンは日本国内の全車種を電動化する方針を掲げる。また、日産自動車は今年12月末に販売するコンパクトカー「ノート」でガソリン車モデルを廃止し、エンジンは発電に特化しモーターで駆動する「e-POWER」モデルに一本化した。
(参考記事:日産、顧客の「不満」と向き合い新型ノートでブランド挽回)

 コンパクトカーや軽自動車は国内新車市場の主力。だからこそ、電動化による値段の上昇や利便性が失われることについて、ユーザーは敏感だ。小型車の特徴を生かしたままで環境性能を高めていく。各社はそんな難しいかじ取りを迫られていると言えそうだ。