自動車エンジン部品で高いシェアを持つメーカー同士の経営統合が注目を集めている。内燃エンジンの重要部品である「ピストンリング」を手掛けるリケンと、日本ピストンリングは7月、2023年春に経営統合することで基本合意したと発表した。リケンは業界売上高2位、日本ピストンリングは3位で、長年のライバル同士。電気自動車(EV)シフトで内燃エンジンの需要減が見込まれる今、統合で経営基盤を強化する狙いがある。ピストンリングメーカーは首位のTPRを加えて国内に3社しかない。2社は公正取引委員会の審査を経て、11月中に最終契約を締結したい考えだ。急激に進むEVシフトの中で生き残りをかけた「大手同士」の経営統合は認められるのか。両トップに統合を決断した背景を聞いた(インタビューは別々に実施し、編集した)。

両社が経営統合を決断するまでの経緯について、教えてください。

リケンの前川泰則社長(以下、前川氏):新型コロナウイルスの感染拡大が一番のトリガーです。EV化の動きが一気に加速しました。以前は内燃機関搭載車のピークアウトは2030年前半と話をしていたのですが、そんなスピードではなくなりそうだという危機感を持ちました。

 実は、数年前から両社の経営企画部門がブレーンストーミング的なことをしていました。共通する部品を集中加工してコストを低減するなど議論していましたが、小さな協業だとぱっとせず、大きく世界を変えられないんですよね。コロナでEV化という大波が来たとき、会社対会社でビッグピクチャーを考えないとメリットが出せないと思い、我々が打診しました。

日本ピストンリングの高橋輝夫社長(以下、高橋氏):話があったのは21年の春でした。コロナ禍という悪環境の中で、自社がどう成長していくかということを考えていたので、そういう気持ち(経営統合)はなかったですよね。言われてから考え始めました。

日本ピストンリングの高橋輝夫社長(左)とリケンの前川泰則社長兼CEO(最高経営責任者)兼COO(最高執行責任者) (高橋氏写真=厚地健太郎、前川氏写真=陶山勉)
日本ピストンリングの高橋輝夫社長(左)とリケンの前川泰則社長兼CEO(最高経営責任者)兼COO(最高執行責任者) (高橋氏写真=厚地健太郎、前川氏写真=陶山勉)
経営統合の概要

 リケンと日本ピストンリングの計画によると、2023年4月に株式移転により共同持ち株会社「リケンNPR」を設立し、CEO(最高経営責任者)はリケン、COO(最高執行責任者)は日本ピストンリングから出す。既存事業の効率化を進めると同時に、内燃エンジンから新規事業に投資を振り向ける。

 1927年創業のリケンは理化学研究所を起源とし、2022年3月期の売上高は783億円。主要取引先はホンダ。日本ピストンリングは1934年の設立で、2022年3月期507億円。主要取引先はトヨタ自動車となっている。

 ピストンリングは、燃料を爆発させることで発生する力をピストンに効率良く伝えるために、ピストンとシリンダーの間を埋める金属部品。爆発力を最大限生かすための密閉性と、金属同士の摩擦の抑制という二律背反した機能が求められる。ホンダ創業者の本田宗一郎氏も開発に苦しんだという逸話が残り、エンジンの性能を左右する重要部品だ。

 自動車や船舶向けのピストンリングを手掛ける大手メーカーは国内に3社しかなく、TPRの22年3月期の売上高は1635億円。グローバルでは、米テネコ(フェデラル・モーグル)、独マーレを加えた5社となる。2社が統合すると、ピストンリングの世界シェアは3割程度になるとみられる。

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