民主党のジョー・バイデン前副大統領の当選が確実となった米国。トランプ政権下では通商問題を中心に、自動車メーカーの経営の前提が大きく変わった。新政権での見通しはどうか。識者2人に聞いた。

トランプ政権誕生時のような激変は起きず
■ナカニシ自動車産業リサーチ代表アナリスト 中西孝樹氏

米大統領選でバイデン氏が勝利を確実にしました。政権交代が自動車産業に与える影響について、ポイントはどこになるでしょう。

中西孝樹氏(以下、中西氏):「環境政策」「米国生産回帰」「不公平通商の回避」。この3つが大きな論点となるだろう。環境政策に関してはバイデン氏や米国に限らず、世界中が環境を守るための社会変革型の政策、いわゆる「グリーンディール」的な需要喚起策に振れている。もちろんバイデン氏もこの方向に向かっていくことになるだろう。

 環境重視型への移行という点では、電気自動車(EV)に対する補助金政策が復活する可能性が考えられる。問題は、連邦政府と州政府の「環境規制のダブルスタンダード」をどう収束させていくかだ。ゼロエミッション車(ZEV)規制や温暖化ガス規制は、13州がカリフォルニア州のルールに準拠している。こうした体制から、連邦政府と州政府が調和路線へと向かうことになるのではないだろうか。

環境政策の変化によって自動車メーカーにはどのような影響が及ぶと考えられますか。

中西氏:カリフォルニア州はともかく、すべての自動車を電動化しようという動きにはしばらくはならないと思っている。米国はピックアップトラックのような大型車が非常に強い国だ。ガソリンも車両も安く、所有と移動のコストが世界的に見ても低い。そこを電動化しようとしても、経済的な負担が重すぎて国民は納得できない。そう簡単には激変の構図とはならず、オバマ政権時代の規制レベルに戻るだけだろう。

米国市場ではピックアップトラックなどの大型車が中心(写真:AFP/アフロ)
米国市場ではピックアップトラックなどの大型車が中心(写真:AFP/アフロ)

 そうなると、技術的に対応が難しいという会社は一つもない。トランプ氏が環境規制を弱めても、ホンダや米フォード・モーターなどはカリフォルニア州の規制を独自に導入したくらいだ。米国の環境規制に対応した車両開発はどの会社もできる。それよりも問題は2重構造だ。2つの商品を開発しなくてはいけないという状況の方がしんどいはずだ。

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