トヨタ自動車が不具合の発覚で止めていた同社初の量産電気自動車(EV)「bZ4X」の国内販売を再開した。販売を担うのは、トヨタグループでサブスクリプション(定額課金)サービスを手掛けるKINTO(キント、名古屋市)だ。とはいえ多くの自動車メーカーがEVを通常の販売店で売る中、なぜトヨタはサブスク限定なのか。KINTOの小寺信也社長にその意義や今後の販売にかける意気込みを聞いた。

小寺信也(こてら・しんや)氏
小寺信也(こてら・しんや)氏
KINTO社長 1984年一橋大学商学部卒業、トヨタ自動車入社。営業企画部長、東アジア・オセアニア本部本部長などを歴任し、2019年から現職

出はなをくじかれた

5月の受注開始直後の6月、「bZ4X」のリコール(回収・無償修理)が発表されて販売が停止。原因究明などを経てようやく販売を再開しました。どのように感じていますか。

小寺信也KINTO社長(以下、小寺氏):厳しい状況が続きました。新型車が発表した直後、品質不具合を起こして数カ月間販売できなかったことは、トヨタの歴史で極めてまれです。完全に出はなをくじかれた形となりました。消費者の皆さんがどう反応されるのか全く見えません。そういう意味で戸惑いがあります。

10月26日の販売再開を機にサブスクの月額利用料を1100円下げるなどの手を打ちましたが、その効果への期待は。

小寺氏:不幸中の幸いですが、リコールによる販売停止で予約客にまだ車を供給できていません。このため、契約はいい方向へリセットできると考えました。サブスクの難しさは途中で値下げできないこと。販売時の不評点を販売期間停止中に改善しようと思いました。「総支払額が高い」「申込金が高い」との声があったのでそれに対応しました。ポジティブに言えば、PDCA(計画・実行・評価・改善)を速く回せました。

 月額利用料の引き下げは、私の経験と肌感覚として高く設定しすぎたかなと思う部分を削りました。今回、トヨタは車体価格自体の引き下げはしていません。トヨタ内で値下げを議論すると大論争になり、相当の時間がかかったでしょう。KINTOとしては数週間でその答えを出せた。我々がフレキシブルに事業できている証しです。

トヨタがKINTOを通じてサブスク方式で販売するEV「bZ4X」
トヨタがKINTOを通じてサブスク方式で販売するEV「bZ4X」

改めてサブスク限定でEVを提供する意義を教えてください。

小寺氏:カーボンニュートラルに向け、EVの販売台数を増やすこと自体には本質的な意味はなく、まずニーズのあるところへしっかりEVをお届けするのが重要です。そのためには、EVに乗る顧客が着実に増えないといけません。

 EVに乗るのを途中でやめてしまう顧客がいれば、カーボンニュートラルにつながりません。我々のサービスの根底にあるのは、車が世に出て廃車になるまで、車とお客様に寄り添うこと。EVに関しても使いやすい環境をつくりたい。我々のサービスで「EVもいいね」という顧客が多くなってほしいです。

 EVにはいろいろなストレスがまだあります。課題はこれからも出るでしょう。顧客からEVに関する要望などのフィードバックをもらい、それに一つずつ手を打つ。サブスクではない売り切り型では、こうした問題が見えづらくなります。それが顧客の不安を生み、EV普及につながらなくなることを恐れています。

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