「今回の見通しの上方修正はこの6カ月の頑張りもさることながら、これまでの11年間の取り組みにより、トヨタという企業が少しずつ強くなってきたからだと思います」。トヨタ自動車の豊田章男社長は、11月6日に開かれた2021年4~9月期中間決算のオンライン会見に登場し、熱っぽくそう語った。09年の社長就任以来、豊田氏が中間決算の場に姿を現すのは初めてのことで、「(歴代の)トヨタのトップとしても珍しいこと」(豊田氏)だ。

トヨタ自動車の豊田章男社長は、09年の社長就任以来初めて中間決算に姿を見せた
トヨタ自動車の豊田章男社長は、09年の社長就任以来初めて中間決算に姿を見せた

 新型コロナウイルス危機による打撃を受けながら、5月の20年3月期の決算発表では、通期の業績予想を見送る競合もいる中、連結営業利益5000億円(前期比8割減)、トヨタ・レクサス車の販売台数800万台(前期比約15%減)という見通しを掲げた。

 先が読めない混乱の中では、賭けにも近い発表だったはずだが、豊田氏は見通しの開示にこだわった。5月のオンライン決算会見でこう語った。「車を造ることで、仕入れ先の工場が動き、地域社会が動く。多くの人の(通常の)生活を取り戻す一助となる。危機的状況だからこそ、わかっている状況を正直に話し、1つの基準を示すことが必要だ。基準があることで、皆さん、何かしらの計画や準備ができる」

「就任時は笛を吹いても誰も踊っていなかった」

 結果は、4~6月期の落ち込みを、7~9月期の国内外の急速な販売回復で補った。4~9月期の連結営業利益は5199億円と、通期見通しを突破。さらに通期業績予想を大幅に上方修正。連結営業利益は1兆3000億円(前期比45%減)を見込み、トヨタ・レクサス車の世界販売も60万台上乗せした860万台に見通しを引き上げた。

 豊田氏は、「お客様の1台が、わたしたちの工場を、日本経済を動かす。その1台1台を造るために、生産も販売も必死になって自分たちの仕事をしたと思う。それが急速な販売回復につながった」と、現場をねぎらった。

 今回、豊田社長が記者会見の場にあえて登場した背景には、「コロナ禍の有事」に際して、11年間の改革の成果を確認し、社員をはじめとしたステークホルダーの求心力をもう一段高めたいとの思いがのぞく。

 リーマン・ショックの直後に社長のバトンを託され、「『ほらやってみなさい。どうせうまくはできないでしょう』と周囲が失敗を待っていた」という逆境から経営者としての一歩を踏み出さなければならなかった。リーマン・ショック時の09年3月期は4610億円の営業赤字に転落し、将来の収益をつくる成長投資を含めて、出血を止めるために「すべてをストップせざるを得なかった」(豊田氏)。その悔しさが今も残る。今回のコロナ禍では、「(生産性の向上など)新しい取り組みをすべて止めなかった」。

 CASEなど急速に進む技術革新から、豊田氏は二言目には「100年に1度の大変革期」と、変化の必要性を社内に説いてきた。自動車と社会インフラが融合する「ウーブン・シティ(Woven City)」と呼ばれる実験都市を静岡県裾野市に建設するプロジェクトも「富士山にちなんで、2月23日にくわ入れ式をしたい」と語り、着々と進む。だが、社内の変革のスピードに戸惑う社員もまだ少なくはない。

 「就任時は、笛を吹いて振り返ってみると誰も踊っていない状況だったが、今は、全員とは言わないが踊ってくれるようになってきた」と語る豊田氏。コロナ禍のピンチを、ステークホルダーのベクトルを1つにするチャンスに変える。1時間にわたる談話の端々に、そんな思いが垣間見えた。

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