8月末、愛知県豊田市のテストフィールドで一人のパイロットを乗せた小さな乗り物がゆっくりと浮かび上がった。「SD-03」と呼ばれるその機体は、8つのプロペラを搭載した電動垂直離着陸型無操縦者航空機。すなわち「空飛ぶクルマ」だ。

公開有人飛行実験に成功したスカイドライブの「SD-03」
公開有人飛行実験に成功したスカイドライブの「SD-03」

 次世代の移動手段として注目を集める空飛ぶクルマ。「空を飛ぶ」という点では航空機やヘリコプターの仲間だが、1~5人乗りが主流で機体もコンパクト。大規模な滑走路や離着陸場を必要とせず都心部でも車のように気軽に使用できるうえ、渋滞に巻き込まれることなく直線距離で効率的に移動できることが大きな特徴だ。

 米モルガン・スタンレーは2040年までに1兆5000億ドル(約170兆円)市場になると試算。米ウーバー・テクノロジーズや仏エアバスグループなど、大手から新興企業まで世界中で100社以上が開発に名乗りを上げている。

 日本勢として冒頭の公開有人飛行試験に成功したのが、スタートアップ企業のスカイドライブ(東京・新宿)だ。今年8月にはNECや伊藤忠商事、大林組など大手10社が39億円を出資。資金や技術、部品の提供を行う協賛スポンサーの数は100社を超え、各産業界の期待を集めている。23年の事業化を目標に、舞洲や淀川河川敷エリアなど大阪湾岸を往来するタクシーサービスの事業を計画している。

 スカイドライブの始まりは、12年に設立された「カーティベーター」というボランティア団体だ。スカイドライブの福澤知浩社長(33)は当時、トヨタ自動車の調達部門に在籍するサラリーマンだった。100個以上のアイデアを仲間内で議論した結果、「一番面白そう」という理由で空飛ぶクルマを開発することに決めた。アイデアを固めるため、ヘリコプターやパラグライダーにもトライ。「空を自由に駆け巡る喜びが、地上のそれとは全然違う、異次元だった」と福澤社長は振り返る。

トヨタ退社を決断した理由

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1456文字 / 全文2255文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

世界の頭脳に学ぶウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「クルマ大転換 CASE時代の新秩序」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。