世界の自動車業界で電気自動車(EV)シフトが本格化し、生産現場にも改革の波が押し寄せている。日産自動車やマツダはガソリン車やEVなど多様な選択肢を用意するため、混流生産を一段と進める。対照的に、米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)はEV専用工場を設ける。持ち前の生産技術で欧米大手の投資攻勢に対抗する日本勢に勝機はあるか。
山口県防府市にあるマツダの主力生産拠点「防府第2工場」。無人搬送機(AGV)が2.5メートル四方の台の上にエンジン部品を積み、エンジンと車体をドッキングさせるラインへ動いていく。ライン上にはセダン「マツダ6」、その後ろには多目的スポーツ車(SUV)「CXー5」の部品が流れ、組み付けられていく。
マツダは9月、防府第2工場で改修工事を完了し、生産ラインを柔軟に変更できるようにした。向井武司専務執行役員は「AGVをはじめとした『根の生えない設備』を増やすことで、生産量の変動や新商品の投入があっても最大限工場を活用できる」と話す。

例えば車体にエンジンと足回り部品を取り付ける工程では、ぶら下がった状態でラインを前進するボディーの下に2台のAGVを走らせ、1台目にエンジン部品、2台目に車軸部品を載せる。小さなクルマなら2台の距離を詰めて走らせ、大型SUVなどなら間隔を離す。ボディーを下ろすとき、車種ごとにちょうどいい位置に部品がくるようにできる。
AGV間の距離の設定を変えるだけで様々な大きさの車種をつくり分けできる仕組みだ。従来の固定的な「根っこのある設備」では車種の違いで生産工程に変化があった場合、大がかりな追加投資がかかっていた。

リニューアルにより、EVやハイブリッド車(HV)をはじめとする電動車、2022~23年に発売予定の大型SUVの混流生産も実現する。「AGVの間隔やアタッチメントを変更すればすべての車種を生産できる」(向井氏)。AGVを活用することで従来の固定設備に比べ改修投資は4割程度に抑えられた。
マツダの世界販売は約124万台(20年実績)と、世界の自動車業界でみればシェアは2%にも満たないプレーヤーだ。当面、従来のガソリン車やディーゼル車を主力にしながら電動化も進めるには、多品種少量生産を一段と推し進めるしかない。
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