EVはガソリンエンジン車に比べて軸受けの数が約3割減るといわれています。自動車向けを主力とする日本精工には打撃ですが、電動化の先行きをどうみていますか。

<span class="fontBold">市井明俊(いちい・あきとし)氏<br>日本精工社長・CEO</span><br>1963年生まれ。東京都出身。86年早稲田大学商学部卒業、日本精工に入社。2017年同社取締役。主に自動車向け軸受けの営業やマーケティング、事業戦略の立案を担当した。欧州やインドへの駐在経験もある国際派。
市井明俊(いちい・あきとし)氏
日本精工社長・CEO

1963年生まれ。東京都出身。86年早稲田大学商学部卒業、日本精工に入社。2017年同社取締役。主に自動車向け軸受けの営業やマーケティング、事業戦略の立案を担当した。欧州やインドへの駐在経験もある国際派。

市井明俊社長(以下、市井氏):エンジンや変速機など多くの軸受けが使われる機構が減るのは間違いありませんが、次の5年間はパワートレイン(駆動系)が多様化する時期とみています。

 既存のガソリン車への需要もありながら、それと並行してHVとEVが伸びていく。今後5年ほどは軸受けの需要が増えると予測しています。ただ、問題はその後です。

 3割減った分を取り返すために、需要が拡大するモーター向けのアプリケーション(製品)の開発に力を入れます。特に狙っているのは複数の部品を一体化させたユニット部品。これまでも軸受けの機能が生かせる変速機やパワーステアリングなどの機構を手掛けてきましたが、それをモーターなど電動化の時代に合わせながら加速させていきます。3割減ったうちの3分の1から半分を取り返したいと考えています。

自動車と産業機械の境界線がなくなる

どのように加速させますか。

市井氏:当社は自動車用以外に、冷却ファンなど電化製品に使う小型モーター用軸受けと、工作機械や半導体製造装置、建設機械など産業機械に使うリニアガイド(機器をまっすぐ動かす直動装置)を手掛ける産業機械部門がありますが、ここに車載用モーター向け軸受け事業を統合しました。今後、その領域で生産能力増強や研究開発の投資を増やしていきます。

 というのも電動化時代には、自動車や産業機械の境界線がなくなっていきます。例えば車の電動ブレーキ用のボールねじ。これまではエンジンのピストン運動で生まれる吸気の力を利用してブレーキの力を増幅する機構が主流でしたが、EVでエンジンがなくなるとそれを電動化することが求められます。モーターが生み出す回転の力でブレーキを制御するために応用できるのが、産業機械でよく使われるボールねじの技術です。ボールねじと軸受けを一体にしたユニット部品の開発を強化するため、自動車部門の人材を産業機械部門に振り向けていきます。

 産業機械向けの幾つかの製品は、自動車向け以上に摩耗しにくい、電気を通しにくいといった特徴を持っています。耐摩耗や絶縁などのためにひと手間加える表面処理技術も自動車の電動化のなかで役に立つと考えています。

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